裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る
柊咲
1章 ~孤高の剣士と両手の花束
第1話 プロローグ
友情、愛情、そして信頼。
その言葉がどれほど脆く、どれほど陳腐なのか。
この日、エギル・ヴォルツは嫌というほど思い知った。
「ごめんね」
元は人間の城であり、現在は魔物の巣窟と化した、死地と呼ばれるデットスポット。
そこから魔物の群れが待つ地面に、エギルはこの言葉と共に背中から突き落とされた。
抵抗空しく落ちていく彼は、信頼し、幼き日から恋焦がれていたメイド服の彼女を見る。
自分を突き落としたであろう右手首を抑え、悲しそうな視線は、どこか遠くに向けられていた。
何があったのか、どうしてこんなことをしたのか。
そんなことは、地面へと落ちていくエギルには理解できなかった。
ただ思うのは、彼女の首を窮屈そうに絞める奴隷具、それを付けている彼女は誰かの奴隷ということ。
そして、彼女が奴隷だということを、エギルはこの日、初めて知ったということ。
そのまま背中から地面に叩き落とされたエギルは、手も、足も、体の至る所がボロボロになりながらも、なんとか立ち上がった。
元城の一番上にいた彼女はもう見えない。
そしてエギルを待つのは魔物の群れ。
絶体絶命。そんな状況で、エギルは壊れたかのように笑った。
「奴隷か、奴隷に恋してたってのか」
悲しみの雨はエギルの目蓋から流れていだが、そんな感情よりも、全身を包むほどのドス黒い憎しみの感情が溢れているのを実感した。
もう、女も、奴隷も、誰も信用しない――この日、この場所から、Sランク冒険者という最強の称号を得たエギルは、変わってしまった。
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