58.お互いへの理解
「……ラムフェグ、目的はなんだ?」
「ふふ、この私が素直に答えると思うか?」
フレイグ様の質問に対して、ラムフェグは笑う。鎧に映るその目が、笑みの形に変化したのである。
彼が言っていることは当然だ。乗り込んできて、わざわざ目的を答える者なんていないだろう。
「……俺を排除しに来たのか?」
「……」
「お前を倒せるのは、俺だけだ。それは逆も同じだろう。つまり、お前は俺を倒せば、目的を遂行させられる」
「ふん、そこまでわかっているか……忌々しいが、流石と言っておこう」
フレイグ様の言葉に少し表情を変えたラムフェグは、また笑い始めた。
彼にとっても、フレイグ様は慣れ親しんだ存在だ。その優れた能力は、よくわかっているのだろう。
二人は、お互いを熟知している。そんな二人にとって、隠し事というものは左程意味がないことなのかもしれない。
「貴様は、私にとって最大の障害だ。貴様さえいなくなれば、全ては解決する。逆に、貴様がいれば、私の作戦は遂行できない」
「それで、俺が準備できる前に襲撃してきた訳か……」
「今の私の戦力では、貴様とラフードの部下を合わせた戦力には勝てない。故に、私は貴様と一対一で戦うことにした。それなら、私にも充分に勝機がある」
ラムフェグは、自分がここに来た事情を嬉々として語り始めた。
彼のことは、恐ろしい魔族だと聞いている。そのことから、私は彼が狂気に取り憑かれた魔族なのだと思っていた。
しかし、彼の作戦は冷静な思考力からもたらされたものである。狂気的な思想を持ちながら、彼は的確な判断力まで持っているようだ。
「その目論見は成功する。今ここで、貴様は私に敗北するからだ」
「いや、敗北するのはお前の方だ。ここで、そのふざけた野望はついえる」
ラムフェグの言葉に、フレイグ様は剣を構えた。
その漆黒の剣の破壊力は、私も知っている。彼が負けるはずはない。
そう思いながら、私は不安を抱えていた。それは、相手が一筋縄ではいかないと聞いているからだろうか。
「ふん、ラフードの形見か……おっと、形見ではないことを貴様も既にわかっているか」
「……」
「相変わらずの無口か。ふふ、貴様も変わっていないようだな……さて、それではこちらも構えさせてもらおうか」
次の瞬間、ラムフェグはその手に剣を握っていた。
そのまま、彼はゆっくりと構える。いよいよ二人の戦いが始まるのだ。
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