15.食事をするのに
私は、ラフードとしばらく談笑していた。すると、そんな私達の耳に、部屋の戸を叩く音が聞こえてくる。
「あ、はい」
「アーティア様、よろしいでしょうか?」
私が応えると女性の声が聞こえてきた。恐らく、メイドさんの声だ。というか、この屋敷に女性は私の他に彼女しかいないのだから、まず間違いなく彼女である。
ちなみに、彼女とあの執事さんの名前は既に聞いている。彼女がエリ―ナさんで、あの執事さんがシャルドさんという名前だ。
「大丈夫です。入ってください」
「失礼します」
「どうかしたんですか?」
「夕食の準備ができたので、お知らせに来ました」
「あ、そうだったんですね」
戸を開けて中に入ってきたのは、やはりエリ―ナさんだった。
ラフードと話していて忘れていたが、確かにもう夕食時である。準備ができているなら、早速食べたい所だ。
「えっと、食堂がありましたよね。そこに行くんですか?」
「そのことなのですが、アーティア様に少し確認しておきたいことがあるのです」
「確認しておきたいこと? なんですか?」
「フレイグ様は、基本的に食事を自室や執務室で召し上がられるのです。残念ながら、今日もその姿勢を変えるつもりはないようで……」
「え? 待ってください。それって……」
言葉を全て聞くまでもなく、私はエリ―ナさんが何が言いたいかを理解した。
フレイグ様は、食堂に来ない。そして、それなら私も食堂に行く必要があまりなくなるため、部屋に食事を持ってきた方がいいか。そんなことを聞きたいのだろう。
しかし、それは流石に冷たい対応ではないだろうか。
『うわぁ……まあ、あいつらしいんだが、それはやばいだろう。せっかく、婚約者ができたというのに、部屋で引きこもるのかよ』
「……その、申し訳ありません」
「あ、いえ、あなたが悪い訳ではありませんから……」
エリ―ナさんも私が理解したことを察したのか、頭を下げてきた。恐らく、彼女も主人の冷たい対応には頭を抱えていたのだろう。
だが、使用人の身で主人にあれこれ言うことはできない。だから、こうやって何も言わず私の元に来たのだろう。
『お嬢ちゃん、頼めるか?』
「えっと……エリ―ナさん、少しだけ待ってもらえますか?」
「え?」
「少し、フレイグ様と話してきます」
「……すいません。よろしくお願いします」
私は、フレイグ様と話してみることにした。
一緒に食事をしたい。その旨を伝えてみようと思ったのだ。
彼が、どのような考えでこんな対応をしているのかはわからない。わからないので、とりあえず話してみることにしたのだ。
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