kaito
ももいくれあ
第1話
もうすっかり秋なのに、どこか寝苦しい明け方、
カイトに出逢った。
それは今までみたことも、触れたこともない世界で、
私はその苦しみにひたすら絶えていた。
まだ完全に夜は終わっていないというのに、
とても眩しくて、目を覆うほどの光を放っていた。
私は信じていた。
カイトに触れる何ヶ月も前から。
きっとカイトに出逢う。
きっとカイトは辿り着く。
それはまるで、金魚鉢の中に泡の水を注いだようなかんじだった。
私の思いがカイトに届き、カイトはその金魚鉢の中で、
私がすくうのを待っていたのかもしれない。
私は真っ暗闇の中を、ただ手さぐりで探した。
耳をすませば聞こえてきそうな、その声を探していた。
くる日もくる日も、その糸を手繰り寄せ、私はいつしかかけひきをしていた。
ぴーんと張りつめた空気の糸を、私はひっぱり続けた。
もうすぐ逢える。
早く会いたい。
でも、そのうち、そんなコトを感じる余裕さえなくなり、私は一気に追い込まれた。
高鳴る鼓動に体じゅうの毛穴から溢れ出す力。
私は叫んだ。
魂で叫んだ。
カイトは泣いていた。
そして私は、カイトを抱いた。
kaito ももいくれあ @Kureamomoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます