kaito

ももいくれあ

第1話

もうすっかり秋なのに、どこか寝苦しい明け方、

カイトに出逢った。

それは今までみたことも、触れたこともない世界で、

私はその苦しみにひたすら絶えていた。

まだ完全に夜は終わっていないというのに、

とても眩しくて、目を覆うほどの光を放っていた。

私は信じていた。

カイトに触れる何ヶ月も前から。

きっとカイトに出逢う。

きっとカイトは辿り着く。

それはまるで、金魚鉢の中に泡の水を注いだようなかんじだった。

私の思いがカイトに届き、カイトはその金魚鉢の中で、

私がすくうのを待っていたのかもしれない。

私は真っ暗闇の中を、ただ手さぐりで探した。

耳をすませば聞こえてきそうな、その声を探していた。

くる日もくる日も、その糸を手繰り寄せ、私はいつしかかけひきをしていた。

ぴーんと張りつめた空気の糸を、私はひっぱり続けた。

もうすぐ逢える。

早く会いたい。

でも、そのうち、そんなコトを感じる余裕さえなくなり、私は一気に追い込まれた。

高鳴る鼓動に体じゅうの毛穴から溢れ出す力。

私は叫んだ。

魂で叫んだ。

カイトは泣いていた。

そして私は、カイトを抱いた。

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