第二章:異世界を駆ける

その21 異世界の生活

 「ヒサトラさん、今日はクワリエの町までパンの出荷と八百屋さんの野菜、それと冒険者の方を運びますよ」

 「オッケー、他に寄らないなら日帰りだな。帰ったら飯を食いに行こうぜ」

 「はーい♪」


 ――あれから一か月と少しが経った。


 俺がもらった家は事務所兼住居となり受付を増設させてもらった。

 そうすうことで荷物や手紙、はたまた人の移動をするためのスケジュールを組むことができるからだ。


 とりあえず依頼があれば移動し、途中にある町や村にお届け物があればそこへ向かうという形を取った。

 もちろん近い町もあれば一日で到着できない町も存在するので、そこをスケジューリングする必要がある。


 今日はクワリエという町へ向かう。俺が住んでいるこの町から20km程度なので日帰りは全然余裕というわけ。

 道が広いから80kmくらいでぶっ飛ばしても事故にならないことも実証済みだ。


 とりあえずロティリア領とサーディス領の町村は全て顔を出し、乗り合いバスのように立ち合いまくるので知名度もまずまず。金もそれなりに稼げるようになってきた。

 これが王都住まいになったらもっと利用者が増えるだろうし、忙しくなる予感がする。多分。


 逆に王都から数日かけてあちこちの領に移動するなら、移動販売という手もあるがそれはまた慣れたらだろうなあ。


 で、従業員は俺とサリアがメインだけど、サリアは俺に着いてくるため、居ない間に受付をしてくれる人を置きたかったので一人雇っている。


 「それじゃ今日もお気をつけてー!」

 「リンダ、そっちは任せたぜ」

 「もちろんです! お給料のために……仕事の後のお酒のためにも!」

 「はは、助かるよ。そんじゃ行ってくる」


 リンダは20歳の女性でちょうど仕事を探していたところだった。

 俺達が王都へ移り住むまで、という条件の下雇っているが元気と調子がいいため受付としては優秀だったりする。

 金が必要な職でもないし、横領も心配ないので安心して遠征ができる。


 「それじゃコンテナに乗ってくれ」

 「おお! ついにとらっくに乗れるな、待ってたんだよ!」

 「はい、あげますよー」


 慣れたものでサリアもゲートのスイッチを扱い昇降させると、冒険者達はコンテナに乗り込み設置しているソファに座り込む。

 いくら荒い運転をしてもトラックは倒れないことを受けてコンテナは片側のみ開けっ放しにしてある。振り落とされないよう鉄柵を設けてあるので景色を楽しむことも可能だ。


 日本じゃ絶対にできない運用法だがな。


 そんな感じで馬車よりも速く、魔物に襲われてもダメージが通らないトラックはちょっと金を出してでも乗りたいという人気移動法となった。

 だから固定できるソファとシートベルトっぽいものを作ってコンテナに乗れるようにしてみたのだ。どうせそこまでの大荷物はねえし。


 「ふふ、子供みたいにはしゃいでましたね」

 「ああいうのならいいんだが、サリアはナンパに気をつけろよ」

 「大丈夫ですよ。私にはこれもありますし」


 そう言って助手席にのるサリアが戦隊ものの武器をと掲げてウインクする。

 驚いたことだがこのおもちゃはこの世界仕様と変化しており、魔力を込めるとマジックソードになり、さらにこのおもちゃは銃剣の類に変形する『よくあるタイプ』の戦隊モノの武器だったようで、銃モードの時は魔力弾が出る。

 しかも魔法を撃つよりも強力なやつなので、硬いサソリ型の魔物であるサソードですら一撃だった。

 軍事利用されると困るので滅多には使わせないけどな。


 そんなこんなで怖くなり、開けていない積み荷がまだある……。なにが入っていると思うよ?


 まあ、暇ができたら開けるかな……


 ◆ ◇ ◆



 「お疲れさん、到着だ」

 「面白かったぜ! また機会があったら乗せてもらうよ」

 「速いわねこれ。でも魔物は避けるんだ?」

 「轢くのはあんまり気分がいいもんじゃねえからな。戦って倒すならまだしも」


 女冒険者はよく分からないけどそういうポリシーがあるのも悪くないと言いながら金を払って立ち去っていく。

 人を降ろした後は荷物の宅配だ。


 野菜とパンを注文した家や店へ荷車を使って配達する。

 このへんは宅急便とかに近いサービスだなと思いながらサリアと奔走するのだ。


 「ありがとうね。出来たてがあまり時間をかけずにきてもらえるから助かるよ」

 「そこが売りですからね。……金額はOKです、毎度!」

 「そういやあんたが居る町の領主様の娘さん、こんど結婚式なんでしょう?」

 「そうですね、俺もトラックで出し物を頼まれているんでその付近は休みなんです」

 「いいわねえ。お料理もいいものが出そうだし! それじゃあ」


 レストランのおばさんはいつも話が長い。

 しかし、アグリアスとベリアスの結婚式は領地同士の話なので、互いの領地にしてみればいい話であるため聞く俺も悪い気はしない。


 そんな彼女達の結婚式は一週間後。

 俺とサリアも出席を頼まれていて、トラックを使ったイベントをやる予定で、俺とサリアからプレゼントも用意していたりする。


 「終わりましたよー」

 「おう、お疲れ! そんじゃ帰ってリンダと飲みに行くか」

 「ですね!」


 そして結婚式当時となり――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る