タイトル通りの場面に遭遇し、咄嗟に正体を偽ってしまった、29歳少女小説家のお話。
ほんのりコメディ調のラブストーリーです。
色恋のお話ではあるものの、どこか日常感のあるまったりした展開が特徴的。
若く烈しい恋物語もいいものですけど、こういうひたすらゆるくイチャイチャする空気感も良いものです。
そして物語のゆるさをそのまま投影したかのような、独特の文体がとても素敵。
ころころと忙しなく自問するかのような口語体。俗に言う昭和軽薄体……というほど露骨ではないものの、なんとなくそれに近い雰囲気を感じて、このふんわり軽い味わいがたまりません。
コミカルでハッピーなところが嬉しい、楽しさのあるお話でした。