生きているけど死んでいる
仲仁へび(旧:離久)
第1話
たくさんの目がある。
たくさんの目があるのに。
その目は僕を見ているのに。
誰もの目が僕を見ているのに。
僕がその皆に視線を向けると、その目はおどろくほどそっぽを向くんだ。
決して目を、あわせてはくれない。
「もう大丈夫よ」
間に合ってなんていないよ。
大丈夫だったものなんて、ないよ。
この体に心なんてないよ。
ずっと一つの場所に閉じ込められていた時に、心をすりきらして、なくしてしまったから。
それはとっくの昔に終わった出来事だから。
心に思い浮かぶのは、薄暗い部屋。
そこから見える窓。
その向こうに青空が見えたはずだけど、もう思い出せないよ。
「もう大丈夫よ」
何も見えていないんだね。
体しか見えていないんだね。
傷がなおって、栄養がかよって、ふくよかになっていく体しか見えていないんだね。
今さら救い出してくれるなら、どうしてあの青空が見えていた頃に助けてくれなかったのさ。
どうして、間に合ってくれなかったのさ。
もう忘れてしまったよ、心なんて。
体を治されても、治らないよ。心なんて。
ベッドの上で目覚めても空っぽだよ。
カーテンの向こうに朝日がのぼってきても、そんなもの存在しないよ。
「もう大丈夫よ」
だから何が?
って、何度でも言うよ。
生きているけどもう、死んでいるんだから。
生きているけど死んでいる 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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