第22話 都一の美女 常磐、仙女の企みと氏王丸

「ほほう、随分と集まったのう。」


院庁の宮廷にたくさんの女性たちが集められていた。


「上皇様。だれに致しまするか?」


「ふむ、わしの答えはもう決まっておる。」


鳥羽上皇が指を指す方向には整った顔立ちでシュッとした鋭い顔立ちの美しい女性だった。


「都一の美女はそなたぞ!」


「「「「「きゃーーーーーッ!!!」」」」」


「えっ、わ、私!?」


選ばれた美女はドギマギしているが周りは大興奮だ。


「おめでとう!常磐(ときわ)ちゃん!」


「私ならあなただって思ってたのよ〜!」


ほかの女性に詰め寄られる。







平安京のとある屋敷。



「ーというようなこともありましたね、、、」


「そうだな。あの時私はお主の心を射止められたと思った時は聞き間違いかと思ったぞ、、。」


「一介の女官に過ぎない私が上皇様に都一番だとご指名なさり、この上ない名誉を頂いたにもかかわらず、義朝様にお拾い戴けて常磐は幸せにございます。」


慎ましく笑う姿さえも趣きが感じられる。


「いや、お主はかなり引く手あまたであったと思うぞ。」


「それでも、義朝様を選んでいました。」


「常磐、、、」


「義朝様、、、」



常磐に宿る新たな命の息吹。


義朝の浮気は後に源氏を大きく飛躍させることになるのを朱若以外に知り得る者は居ないだろう。













ーーーーーーーーーーーー☆


武蔵国。秩父重弘の屋敷。


「暇だなぁ〜。釣りにでも行こうかな!」



「へぇ〜、君が畠山氏王丸(はたけやまうじおうまる)ね。」


近くに誰もいないはずの屋敷でいきなり後ろに人がたっている。


「何やつ!」


(見たところ、男の格好だが体つきは女性だな。でも只者じゃない。この屋敷に忍び込むなんて至難の業だからな。)


組紐で長い髪を軽く結んだ女性に隙のひとつも見当たらない。


「あなたの父親は今秩父党の座を狙っているのよね?」


「確かに、私の父親は秩父重弘ですが、、、それがなんだと言うのです!もしや叔父上(重隆)の手先ですか!私とて無抵抗で死ぬ訳には行きませんよ!」


「まあ、そんなに焦らないの。私はあなた達の敵でも味方でもないから。ちょっと助言を、、、ね?」


「・・・。聴くだけ聴きましょう。」



「そうね。ここにもだいぶ無理して忍び込んだから手短に話すわ。もし、父に重隆の隙を狙って秩父党の座を取り返したいなら鎌倉の悪源太を頼りなさい。」


(鎌倉の源氏を?確かに鎌倉の源氏とは利害が一致しているし道理としては間違ってはないが、、、)


「そしてあなたはその弟の朱若に仕えること。」


「朱若?どなたです?悪源太義平殿にそんなに弟君はおられましたかな?」


怪訝な氏王丸に仙女は笑う。


「ひょっとすると源氏で一番恐ろしいのはあの子かもね。五歳になったばかりなのに最近単独で重税を課す受領を武士六人を相手に懲らしめたらしいからね。まぁ、悪人相と多少陰な感じは玉に瑕だけど。」


「な、なんですか。そんなこと信じるわけが、、、」


氏王丸が気づかないうちに仙女は耳元で囁く。


「会ってみたらのお楽しみよ。あなたほどの人間なら彼も厚遇すると思うわ、、」


「な、なんだと、、、」


氏王丸が我に返ると仙女はまた先程の場所戻っていた。


「まあ、そういうこと。あなたも試しに会ってみると仕えたいと思うはずよ?ああそうだ、そろそろ時間だから行かせてもらうからね。」


「おい、待て!それはどういう、、」


仙女は柵を飛び越え消えてしまった。


「なんだったのだ、、、。あれは、、、」


しかし、一つ名が彼に残る。


「源朱若、、、。あの化物じみたおなごが言うほどの幼子か、、、。」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る