第二話「開門」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 『白い人』だ。わたしの勘は良く当たる。

 周りの人たちが透明な壁に向かって叫び始めた。透明な壁を叩いて泣いている人もいる。

 わたしは『白い人』の姿を一目見られただけで満足だったけど、みんなと一緒に声を出してみた。

 けれどそのせいで透明な壁が白く曇ってしまった。前が見えない。


 そうだ。

 声が届かないなら文字を書けばいい。

 わたしは白く曇った透明な壁に大きく自分の名前を書いてみた。

 そのおかげで『白い人』はわたしの前で足を止めてくれた。わたしは勘だけでなく運も良い。

 わたしはもう一度文字を書くために透明な壁を手で拭いた。


 苦しい。息が出来ない。

 足を止めた『白い人』のせいで人が集まってきてしまった。

 こんなことになるなら文字なんて書かなければ良かった。

 透明な壁が段々と白くなる。

 もうお終いの時間なのだろうか。


 バリーンッ

 壁が破れた。赤いランプが光ると共に警報が鳴る。

 ふと気づくとわたしは『白い人』の前で倒れていた。やっぱりわたしは運が良い。

 振り返ると、さっきまで『白い人』に詰め寄っていた人が一目散に逃げようとしている。

 なんでだろう。


「大丈夫かい?」

 『白い人』は服で身体を隠しているけれど顔の色は今日の朝に食べたパンと同じぐらい白かった。

 でも優しくない。目の前にいる『白い人』は転んでいるわたしの手を取ってくれないから。


「この星は綺麗ですか?」

 わたしが質問をすると、

「……あぁ、とっても綺麗だよ」

 と、『白い人』は少し悲しそうな顔で答えてくれた。

 初めて『白い人』と話すことが出来た。わたしは運が良い。


 次の瞬間、わたしの身体にいくつもの屈強な腕が押し寄せられた



 わたしは暑そうな服をきた人たちに閉じ込められた。

 あの場所にいた人たちはみんな閉じ込められたらしい。

 わたしもみんなも病気になってしまったようだ。

 何本も注射を打たなくちゃいけない。でもそれは嫌だ。

 わたしは暑そうな服を着た人たちに頑張って頼んだけれどお母さんと同じ様には出来なかった。魔法の言葉を使っても説得できなかった。

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