第3話 ブラックの合流
魔人の国ではブラックが執務室にこもり、テキパキと仕事をこなしていた。
いつになく王としての仕事に真剣に取り組んでいるように見えたので、ネフライトはとても満足であった。
だが実際はそう見えるだけで、そんな事は無かったのだ。
仕事をこなす事で余計なことを考えないようにしていたのだ。
暇になると舞の事を考えてしまうので、仕事を増やして考えないようにしていたのだ。
だが、やはり1日のやる事が終わった後や食事の時、寝る時など、考えない日は無かった。
そんな時、アクアとスピネルが黒翼国の森の探検に参加したいと言ってきたのだ。
以前だったら、私も少しは興味があったが今回は少しも行きたいとは思わなかった。
ジルコンも行くと言う事で許可を出したが、早速二人で先に出かけたようなのだ。
自由気ままな二人が羨ましいとも思った。
そんな時、執務室のドアが勢いよく開いた。
ジルコンがノックもせず入って来たのだ。
「ブラック、あの二人もう行ってしまったわ。
私も行きたかったけど、どうやら管理下の街での揉め事が落ち着かないのよ。
代わりに誰か行ってもらう方がいいかしら?」
あの二人だけで行かせるのもやはり不安であったので、ユークレイスやトルマに行けるか聞いてみたのだ。
しかし、どうも二人とも今からすぐと言うわけには行かない事情があるようで、少し時間をくれと言ってきたのだ。
まあ、暇なのはあの二人くらいなのだろう。
国の大事に関わることでは無いので、無理に行かせることでも無かったが、どうしたら良いものか考えていた。
すると、ドアの外で二人の話を聞いていたネフライトが口を挟んできた。
「ではブラック様が行かれるのはどうですか?
最近は王としての仕事もしっかりとやられており、溜まっている仕事もありませんし、羽を伸ばしてみては?」
あの二人のお守りで行くのが羽を伸ばす事には到底ならないと思った。
「いいじゃない。
たまには遊んでくるのもいいかもよ。
舞が帰ってから、ブラックはずっと落ち込んでたし・・・」
私がジロっとジルコンを見上げると、余計なことを言ってしまったと思ったのか、すぐに部屋を出て行ったのだ。
まあ、実際そうなのだが・・・
「わかりました。
では、私が向かいますよ。
後はよろしくお願いしますね。」
私はあまり気が進まなかったが、向こうの国に行くことで気が紛れれば良いかと思う事にしたのだ。
○
○
○
黒翼国の城では、魔人の国から来た客人をもてなしてくれた。
そしてスピネルは魔人の王からの親書を、黒翼国の王であるブロムの父に渡したのだ。
是非とも探検に一緒に参加したい旨を話した。
それを聞いたブロムは喜んで二人に声をかけたのだ。
「是非一緒に行ってもらえると心強いです。
先程の蜂退治も素晴らしかったですよ。
スピネル殿、流石です。」
魔人の国では自分よりも格上の魔人もいる為、頼られる事があまり無かった。
その為、ブロムからそう言われて、スピネルはとても気分が良かったのだ。
「そうそう、実は大昔から伝えられている書物に、地下の森について書かれたと思われる絵本があるのです。
おとぎ話かもしれませんが、無視出来ない話もあるのですよ。」
そう言って、絵本に書かれている話を教えてくれたのだ。
それを聞くと、アクアとスピネルはますます興味が湧いたのだ。
「まあ、この翼国のルーツが少しでも分かるといいのですがね。」
黒翼国の王は探検隊を編成することを了解し、魔人の参加を認めてくれたのだ。
ブロムは明日までに人員を考えるとの事で、今夜はゆっくりと城で休むようにと、二人に促したのだ。
「明日なら、ジルコンも間に合うだろう。
楽しみだな。」
アクアは身体が成長した割には、心はまだまだ少年のようで楽しみで仕方なかった。
それはスピネルも同じであった。
次の日、ブロムが5人の兵士を連れて来た。
身体も大きく、剣の腕も素晴らしい兵士達を揃えたようだ。
あの地下の森には巨大で危険な生き物が多数存在しているので、対抗できる兵士でなければいけなかった。
実を言うと、巨大な蜂が地下の森から現れたことが、黒翼国においてはかなり問題であった。
今まで、森から生き物が上がってくる事が無かったのだ。
今後も同じ事が起きるとなると、この国にとって脅威となるのだ。
その原因を知るためにも、行ってみるしか無かった。
探検隊の出発の準備が整い、後はジルコンを待つだけになった。
「それにしても、ジルコンは遅いな・・・」
アクアがつぶやいた時、それまで楽しく話していたスピネルが、急に顔色を変えて黙り込んだのだ。
それを見た途端、アクアも悟ったのだ。
「まずいな・・・何でだ?」
アクアはそう言ってため息をつき、スピネルと顔を見合わせたのだ。
二人の予想通り、数秒後に強力な気配の者が現れたのだ。
それは魔人の王ブラックにほかならなかった。
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