17話 男はだいたいコーラ飲ませとけばいい
「よし、これで一個終わりっ! すごいすごい、こんなに簡単に終わったの初めてだよ」
予言ノートに嬉々としてカラーマーカーを引きながら
「お疲れ様です」
僕もつつかれまくった頭を手でさすりながら何とか笑顔を作ってみせる。
「それも
「いや、いいですって」
「そんなこと言うなよー。奢られとけよ、後輩ー」
先輩とか後輩とか関係なく奢られるのはあまり好きではないけれど、はしゃいだ様子で自販機に硬貨を投入する多喜さんを止めるのもの気が引ける。
「何にする? あ、待って、言わないで! 当てるから! わかるから、わたし!」
本当にはしゃいでらっしゃるな。
「ふふふ、予言女を舐めるんじゃないよ。こんなものはわたしの予言力で簡単に……コーヒー?……スポドリ?……じゃなくて、お茶かな?」
「あの、僕の顔色見るのズルくないですか」
「はい、コーラ! どうせ男はみんなコーラ飲むんだよ、馬鹿みたいに」
すごい偏見だな。まあ、好きだけどさ、コーラ。取出し口に転がったペットボトルはひやりと冷たく掌に吸いついた。
「じゃあ、遠慮なくいただきます。授業があるんで今日はこれで行きますね。明日は大学で待ち合わせでいいんでしたっけ?」
「うん。一限目終わったらね。今日はありがとうね、海堂くん。本当に助かったよ」
「はい、お疲れ様でした。さよなら」
手を振る多喜さんに見送られ、僕は公園を後にした。
キャップをひねってコーラを喉に流し込む。炭酸が優しく舌をくすぐった。
美味い。正直そこまで役にたった気はしないけれど、こんなものまで奢ってもらって本当に良かったのだろうか。
「おーはよー!」
何て考えながら歩いていたら、別れを告げたばかりの多喜さんにミニカーで背中を強襲された。
「ビックリしたぁ! 何ですか、多喜さん。忘れ物ですか?」
「えへへー、海堂くん海堂くん。今日は本当にありがとうね」
ポルシェのミニカーをチャカチャカと揺らしながら多喜さんが笑う。
「はあ、どうも」
「じゃあ、またね」
「え、それを言うためにわざわざ追いかけて来たんですか?」
「そーだよー。つまり、君が思ってる以上に助けてもらったってことだね」
「……そうですか」
そう言われてもやっぱり手ごたえは湧いてこなかったけれど、
「また明日ね、海堂くん!」
多喜さんが顔中いっぱいで笑っているので、多分これで良かったのだろうと思った。
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