第34話 悪魔たちに厳罰を!
「さあ、始まりました! 独身貴族最終回スペシャル、その後の二人。 私は司会の佐々木です。
長いようで短かった2週間、最後に選ばれたのはここにいらっしゃる
お二人が並ばれると本当にお似合いですよ。まるで前から恋人同士だったみたいにぴったり来ますね」と佐々木はお世辞を言ったつもりだったが、裕星と美羽は互いに顔を見合わせて苦笑いしている。
「それではこちらのソファーに座っていただき、一緒に今までのエビソードを後ろのスクリーンに映しながら話して行きましょう。それでは、VTRスタート!」
佐々木の声で後ろのスクリーンには今までの美羽と裕星のツーショットデートの様子や二人の会話を流し始めた。
「ああ、このとき、この海のデートではお二人は何を話されていたんですか? ずっと気になっていたんですよ」
すると裕星が先に口を開いた。
「ああ、この時ですか。この時は、彼女が泳げないので、溺れないようにサーフボードの乗り方を伝授してましたね。落ちたら僕がいるから大丈夫だよと言って」
「おお、なかなかステキで頼れる男性ですね。ところで、美羽さんは裕星さんが他の女性達と仲良くお話しされているのを見て、辛くなかったですか?」
「はい、辛かったです。でも、信じていましたから」
「おや、もうすでにご自分が選ばれると信じていたんですか?」
「いいえ、そんな自信は全くなかったです。でも、裕星さんはとても正直な方で、嘘が嫌いなんです。だから、私に『信じて』と言ってくれたので、私はその言葉をずっと信じていました」
「なんて素敵なエピソードでしょうか。それでは次のVに行きましょう」佐々木が後ろを振り向いて、スタッフに指示すると、次に現れた映像はとても二人のラブラブ映像などではなかった。
会場には100名近い観覧客も入っている。映像が流れ始めると、観客たちが急にザワザワとしだして裕星たちの後ろのスクリーンを指を差しながら見ている。
牧田はカメラの奥で他のスタッフと談笑していたが、観覧客があまりにもざわついているのが気になって、急いで放送中の裕星たちのところへ向かった。
すると、スタジオのバックにある大きなスクリーンに流れているのは、裕星と美羽のデートの様子などではなく、自分自身と赤羽の密会の映像だったのだ。
スクリーンの牧田は、まさか自分達の悪事が録画されていたとも知らずに、赤羽と過去の事務所の悪行を笑いながら明け透けに話している真っ最中だった。
「――な、なんだ、これは!」
牧田は呆気にとられて見ていたが、すぐに鬼の形相で「止めろ! すぐに止めるんだ! これは一体なんの演出だ?」と叫んだ。
司会の佐々木も何が起きているのか分からずにスタジオの中を行ったり来たりして慌てている。
しかし裕星は、牧田がスクリーンを見ながら気が動転したように叫んでいるのを見て、「牧田さん、これは演出じゃないですよ。どう見ても真実の映像ですよね?」とマイクを通して冷静に言った。
しかし牧田は裕星の声など耳に入らないほどパニックに陥った様子で、「おい、AD! 佐藤、止めるんだ! おい佐藤はどこだ!」と叫んでいる。すると、スクリーンは止まることなく次の動画を映したのだった。
今度は牧田がどこかの田舎の民家の前で中年の女性と話をしている映像だ。
牧田の声で、「こいつらをバレないように見張っておけよ」という音声が流れた。
牧田の車が遠のいていく映像の後、カメラはどんどん家の中に入り、突き当たりの部屋のドアの隙間から映し出されたのは、椅子に縛られている、先日までこの番組の出演者だった
キャ―ッ! 客席から怯えたような悲鳴があちこちから聞こえた。客席のザワザワが更に大きくなった。次には皆一斉に、スクリーンに映し出されている映像の主役、今目の前にいるプロデューサーの牧田に注目したのだった。
「な、なんだ、これは! 俺は陥れられたんだ! これは嘘だ! こんなのは捏造だ!」と、この期に及んであがいている。
するとそこに、拉致されているはずの鈴木永久と加藤百合奈本人がスタジオに入ってきた。
2人はステージに上がると、「私たちの拉致を指示したのはこの牧田です! 私たちはあそこでこの番組が終わるまでずっと監禁されていました。
最初は変な男2人にあそこに連れて行かれたんですが、そいつらがハッキリ首謀者は牧田だって言っていました!」と牧田を指さしたのだった。牧田は口の軽い男たちに暴露され、闇アルバイトの人選にも失敗したようだ。
すると、ちょうどそこへアンも入ってきた。
「牧田プロデューサー、いえ、元赤羽芸能事務所のマネージャー、
私たちが生きた証人です。あなたと赤羽社長が何をしてきたか、これが証拠です」
牧田のオロオロしている姿をスタジオの全ての人間が注目していた。それを生放送中のカメラが一斉に捉えていた。
スタジオのカメラマンたちは事前に岩井ディレクターから指示されていたのだ。どんなイレギュラーがあっても絶対にカメラを止めるな、と。
するとその時、ザワついているスタッフの間を抜け、数名のスーツを着た男達がスタジオ内に足音を立ててズカズカと近づいてきたのだった。
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