第31話 本選
十一月五日、わたしは、東京ビックサイトにいた。
今日は、ドローンレース大会の本選だ。本選は夜八時から、今は夕方の五時だからあと三時間で本番だ。
本選のステージは、予選会からは信じられない、とんでもなく大掛かりなステージだった。
今日のレースのためだけのために作られた鉄のパイプで組み上げられた専用ステージは、いろんなメーカーのロゴがところせましと貼られている。
参加するのは、東京と、大阪の予選を勝ち上がった十二人、海外からの招待選手二人、そしてこの大会のためにドローンを練習してきたアイドルと、おこぼれで決勝に参加させてもらったわたしの十六人。
その十六人が、四人ずつで対戦して上位二人が勝ち残るトーナメント方式だ。
わたしは、スポンサーの緑色のユニフォームを着ている。サイズのおっきなユニフォームを着て、ボトムは丈の短いショートパンツ。完全にユニフォームが隠れる短さで、黒のニーソックスをはいている。そして、髪に緑のヘアピンを合わせた。
わたしは、
いつものように、フィールドの中にはいりたいけれど、ステージは、鉄のパイプがはりめぐらされていて、入ることができなかった。
仕方がないので、わたしは右手で車椅子を走らせて、コースの長さを体に覚え込ませる。
電動車椅子の最高速度なら、毎回同じスピードで移動できるから、これで感覚的に距離を測ることができる。車椅子の最高スピードは、時速四キロ。ドローンはこの車椅子の最大十倍のスピードで飛行する。
ステージは二階建てになっていて、高度を急激に変えながらカーブを曲がる必要のある箇所が二箇所、高度をかえつつ、百八十度の切り返しが必要な箇所が一箇所ある。そこがわたしの勝負どころだ。
ドローンの動きをわかりやすく伝えるためのコースって感じ。特に、高度を変えつつ急速に折りかえしをするなんて、四つのプロペラで飛行するドローンじゃないと絶対にできない動きだ。
そしてそれは、わたしが一番得意とする動きだった。
「アップダウンが激しすぎる。かなりの高難度コースだ。安全運転の完走ねらいでも、十分に勝機はあると思う」
わたしの横でいっしょにコースを見てくれている
「うん」
わたしは力強くうなずいた。ビルの向こうには、おっきな太陽がゆっくりと沈んでいっていた。
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