第22話 自己紹介とテクノロジー(4)

たまきさん。良い発想ですね。その通り!セル社では新たにこの『セル・ディビジョン』を使用したゲーム制作を予定しています!現実とバーチャルが融合した新時代のゲームです。楽しみですね」


 葛西かさいの言葉に再び教室は賑わいを見せた。環と呼ばれた少年は満足そうにうなずく。


(そっか。だからお父さん、命島に出向が決まったんだ……。これを作るために)

「景色や動物、ゲームだけでなくニュースやお店の宣伝なんかにも活用される予定だからお楽しみに」


 真見は新しい技術をの当たりにして心臓が高鳴たかなった。


「それじゃあ、ガイダンスはここまで。休憩の後、各々の教室へ戻ってください。神野さんもこのまま中等部の教室に行きましょう。天笠あまがささんと相模さがみさん、案内宜しくね」

「……はい」

「はーい」


 温度差の激しいふたつの返事が聞こえる。小学部の子供達はまだ真見の方を見ていたが後ろに控えていた教員に促されて移動していくのが見えた。真見はおずおずと隣の席に座る少女、天笠と呼ばれた少女を見る。


(明らかに私の事、嫌ってるっぽいけど挨拶は大切。ちゃんと名前も聞かなきゃ)

「あの……!お名前教えてもらってもいいですか……」


 消え入りそうな声で話しかける。


天笠瑠璃あまがさるり。中学二年生。よろしく」


 相変わらず表情が無い。り目のせいで怒っているように見えていただけかもしれない。真見は張り付いた笑顔を浮かべる。


(また人の反応に一喜一憂いっきいちゆうして……。天笠さんは怖い人じゃないって。駄目だな私)

「やっほー!神野さん。元気?」


 2人の間に呑気な笑顔を浮かべた良が入ってくる。Tシャツにハーフパンツという格好は変わらない。


「この学校って……服装自由なんだ……ですね」


 真見は2人が1つ年上なのだと悟って慌てて敬語を引っ張り出す。


(だって天笠さん、りょうって呼び捨てにしてたし……多分。幼馴染なんじゃないかな)


 その様子を見ていた良が笑い声を上げた。


「敬語なんていいよ。同じ中等部なわけだし。ね?瑠璃」

「……私は別にどっちでもいい」


 真見が照れくさそうに視線を床に落とす。


「そうだよ。僕は適当なジャージだけど瑠璃は陸上の大会に出たりしてるから学校指定のもの。基本的に何でもありなんだ。高等部の人は制服っぽい私服来てるし」

「陸上選手……格好いい!短距離ランナー?」


 真見は感嘆かんたんの声を上げた。瑠璃は一切表情を変えずに小首を傾げる。


「なんで分かるの?」

「え……。なんとなく、直感ちょっかんかな」


 真見の答えに良がまた笑う。なごやかな雰囲気に変わり、真見は安堵のため息を吐いた。


「足の筋肉からじゃないかな?」


 突然背後から声がして真見は肩を震わせた。反射的に瑠璃の背後に隠れる。


「ごめん。驚かせるつもりは無かったんだ……。ちょっと島の転入生に挨拶しておきたくて」


 声の主は先ほど目が合った高等部の男子生徒だった。

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