AI〈アイ〉はただひたすらにズレている
せふカのん
第1話
窓の外に掛けられた風鈴の音。ジージーミンミンと鳴く蝉の声。
夏休み終わり時で暑さがまだまだ続く今日この頃。
僕_滝澤篠は寝転がってぼーっと何もしない昼を過ごしています。
普通なら中学生最初の夏休み、みんな初日から遊びまくって、今ぐらいの終わり時になってから難しくなった課題をひぃひぃ言いながらやってると思う。けど僕は特別遊び相手もいないので、夏休み入る前にやりきってその分暇になったから存分にダラダラしている。
たまに本を読んだりアイスを食べたり。あとは、、、あれだ。
「さぁって、、、今日もやろうかな。」
起き上がってベッドから降り、ぐーっと伸びをする。
そして机に向かい、スケッチブックと0.3のシャーペンを取り出した。
すらすらと紙にペンを走らせる。
僕の趣味はイラスト。昔から姉が描いているのを見て、やってみたらとても楽しかった。だからこうして今まで続けている。
それに、絵を描いていると自分の世界に入れる。周りの喧騒が聞こえなくなって、自分が考えた人物・世界を楽しめる。聞こえるのはペンの黒鉛が紙にこすれる音だけ。
誰も談笑できる人なんかいないし、ずっと一人で過ごす僕にはとても心地良い時間だった。
⧉ ⧉ ⧉
小学校の頃から本を読んで誰とも関わらないようにしていた。保育園時代、幼児ながらに同じ幼児からいじめを受けて、人間関係なんてろくなことがないと思ったから。
でもどうしても先生達は「お友達」「協力」を好んでたくさん人と関わらせようとする。みんな仲良しな人と一緒に行動するから、いつも僕は一人ぼっち。
仲間はずれは嫌。だけど逆に自ら一人になることで、「自分は一人が好きなんだ」って思い込もうとしてた。それでも辛くて辛くて。
人間、世の中にいる限り人と関わらなきゃいけないってことを小学3年生ながらに学んだんだ。
5年生からは、ならいっそ、世の中との関係を断ってしまえばいいんだと思って。
僕は、不登校になった。
そんなとき姉と遊んでいたら、絵を描くのが楽しいことを知ってハマった。
ただひたすらに毎日毎日毎時間毎分、描いて腕を上げていった。
でも流石にこのまま不登校でも大人になったらそれこそどうすれば良いのか分からなくなるし、家族にもこれ以上迷惑はかけられないって、ちょっと考えられるようになった6年生の頭が感じた。
だから中学からまた通い始めたんだ。
うちの中学_「香荘中学校」は、僕達が通っていた「香荘市立香荘小学校」と子供が増えたことによって造られた「香荘市立香荘東小学校」の生徒たちが一緒に通う。
知らない子も増えたし、前のように嫌気が差して辛くなることはないだろうと思って入学式を迎えたら、比較的うちのクラスに東小の人が多かったから良かった。でもやっぱりみんな元々の友達と一緒にいるから新しく僕と友だちになってくれる…なんて人はいなかった。
軽く会話くらいならしてくれた。
それで良かった。
話しかけてもらわなくてもいいから、僕のことをいないものにしないでいてくれたら。
そうして、この夏休みまで基本一人で、必要なときには軽く会話するくらいで過ごした。
⧉ ⧉ ⧉
「あれ、、、もう
ふっと集中が切れていろんな事に気が付く。
窓の外を見ると日が落ちかけていた。
1時くらいからずっと描いていて、水分補給のために麦茶を飲んでいたけどいつの間にかもう中身が空になっていた様。
やばいな、、、姉や母は麦茶が好きだから家にいつもあるのだけれど、ちょうど仕事でいない日々が続いていたから、遠慮なく飲んでいた。もう予備がない。
ダルいけど買いに行かなきゃか、、、。コンビニに売ってるよね。
渋々スケッチブックを片付ける。
着ていた服に夜は冷えるとニュースが言っていたから、パーカーを羽織って財布と一応スマホを持つ。
玄関を出ると確かに昼間の茹だるような暑さはどこへやら。とても涼しくなっている。
足早にコンビニへ向かった。
お目当ての500mlペットボトルの麦茶を2本買って外に出ると、時間は経っていないはずなのに、日が暮れかけている。
その夕焼けが橙が鮮やかに映えていてあまりにも綺麗だったから、スマホで写真を撮ろうとした。でも建物が邪魔で上手く撮れない。
なら、とっておきの場所がある。
僕は家からちょっと離れた場所へ向かった。
そこで出会ったんだ。あの子に。
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