暗黒葬戯(あんこくそうぎ)

ヒイロ・ユウ

第1葬戯 贄人(にえびと)

 気がつくと俺は、真っ暗な洞窟の中にいた…。

 そこは、どこまでも果てしない暗闇が続く、無明の闇の世界だった…。




 俺の名前は、藤之宮優一郎ふじのみやゆういちろう。平凡な高校三年性で、東京都内にある大学の受験を控えている。


 昨日の学校の帰り、俺は何か事件に巻き込まれたような気がするんだが、よく思い出せない。



 辺りを見回すと洞窟の所々には地面から蝋燭が立ち、岩壁には火の灯ったランタンがかけられ、それらはほんの少しだが、消えかかった生命の灯火のように無明の闇を明るく照らしている。


 岩壁はよく見ると、人の顔や体の形をした壁画のようなものが、憎悪に満ちた表情を浮かべて描かれていた。


 そして俺の手をよく見ると、一本のナイフのみが握られている。



 遠くで誰かの声がかすかに聞こえた。それも、街で男同士がケンカを起こしているような声だ…。



「オラァ、よこせぇぇぇ‼︎」


「死にやがれぇぇぇぇっ‼︎」



 その瞬間、俺は何となくだが察してしまった…。


 俺はこの暗闇の中でたった一本のナイフだけを頼りに、生き残りをかけたサバイバルゲームをやらされているのだと…‼︎


 そして、どこからともなく、不気味な合成音混じりの低く暗い、謎の声が聞こえてきた…。



 「贄人(にえびと)よ…、贄人よ…」


藤之宮「誰だ…⁉︎」


 「汝は罪を犯し、魂を穢した、神の生け贄として供えられた贄人である…」


藤之宮「贄人…⁉︎」


 「ここを出たくば、全ての贄人たちと葬り、戯れ、その魂を神に捧ぐのだ…‼︎」


藤之宮「贄人って何だ…? 俺はなぜこんなところに…?」


 謎の声は消えてしまった。



 俺は無事に生き残れるのか⁉︎ と言うか、この暗闇の世界は一体どこで、俺はなぜ殺し合いをしなければならないんだ⁉︎


 やっぱり、昨日の夕方に何かあったに違いない。そこにヒントが…。

 ダメだ…、思い出せない…。



 俺はしばらく辺りをうろつき、この世界の様子を見てみることにした。

 歩いていると、つま先にコツンと何かが当たった。しゃがんで見てみると、それは一冊の真っ黒な本だった。



藤之宮「贄人にえびとしょ…? こ…、これは何だ⁉︎」



 俺が表紙をめくるとそこには、贄人やこの世界のこと、この世界で行われる「暗黒葬戯あんこくそうぎ」と言うデスゲームのルールについてびっしりと書かれていた。




 無明の暗闇の中で今、生き残りを賭けた恐怖の椅子取りゲームが始まる…。

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