それに心があったら…?
@87cosa
第1話 「鏡」
あなたは誰?そう、素敵な名前ね。
私?私はそうね…「鏡」って呼ばれてるわ。
自分が何者かわからない。だって私自身がないんですもの。
形はあるわ。色んなタイプがね。
全身を映す姿見と呼ばれるものからコンパクトなものまでね。
でも私は私であって私じゃないの。
常に何かが映ってるから、私自身の認識ができない。折り畳みタイプにしてもそう。
閉じたところで見えるのは闇。そう、私は光と誰かが使う時にのみ存在が認識できるの。
哀しいわ…
でも、人を美しく変身させることもできる。
そこは存在価値を感じる場面ね。
姿見の私は、人の成長を見守ってきた。
小さかった子が成長していく様はそれはもう堪えられない嬉しさなの。
そしてこれからも見守っていく。
1人の過去、現在、未来を見られるって、こんなに幸せなことはないわ。
私は私がわからない。
でも、それでもいいのかもしれないわね。
ただ、何かを書いたり汚したりはしないでちょうだい。綺麗に映せなくなるから。
割るのなんかもってのほかよ。
わかったわね?
ほら、持ち主が来たわ。それじゃあね。
あなたのおかげで私の存在価値がわかった気がするわ。
それに心があったら…? @87cosa
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