【声劇台本】二人きりの秘密の庭で

水縹❀理緒

作:水縹❀理緒

※利用規約はプロフィールにあります※

台本時間:15分前後


アクア

男性。

世界的人気モデル。ブランド会社の社長と結婚している。年齢は20以上であり、エメと同い年。エメの事を想っている。



エメ

女性。

世界的有名人気画家。大手ショッピングモールの社長と結婚。年齢は20以上であり、アクアと同い年。アクアの事を想っている。




本編↓

ーーー


〈高校生の頃〉


アクア:あのさ…エメ


エメ:…なに?校舎裏なんかに呼び出して


アクア:…エメって、美大にいくんだよね?


エメ:……そうだよ。親がうるさいから


アクア:…もう会えないんだよね、きっと


エメ:連絡先も消すよ


アクア:エメ。話があるんだ


エメ:………その話の内容は想像がついた。アクア、分かってるはずよ?私達が関わる事はもうないって


アクア:エメと一緒にいたい


エメ:…許嫁がいるでしょ、お互いに


アクア:それでも


エメ:親に別れてくれって言われて別れたのに


アクア:……ねぇエメ


エメ:アクア


アクア:…なに?


エメ:なら、私の練習相手になって


アクア:…え?


エメ:私が描きたくて描く人物画の最後は、アクアがいいから


アクア:………うん。分かった 



〈現代へ〉


エメ:ちょっと…アクア?ねえ起きて


アクア:………エメ、なんか大きくなった?


エメ:はい?


アクア:…やっぱり僕…


エメ:何言ってるの。アリスの世界にでも行ってたの?ほら、起きて。


アクア:……あれ、あー…僕寝てたのか


エメ:結構寝てたよ。椅子に座りながら器用に


アクア:ごめんごめん


エメ:全く…


アクア:…あの日の続きをまたしているみたいだ


エメ:え?何か言った?


アクア:いいや。昔はモデルなんて、エメといる時だけだと思ってたけど。未来はどうなるか本当に分からないね


エメ:そうね。でもアクアは顔立ちがとても綺麗だから、スカウトされるだろうなとは思っていたけど。本当にモデルになるなんて


アクア:綺麗だよ


エメ:……何が?


アクア:君しかいないでしょ?僕が見つめてる先にいるのは


エメ:あぁ…そこにある画材か、アクアの事かと思った


アクア:エメの事


エメ:はいはい、ありがとう


アクア:本気だよ?


エメ:はいはい


アクア:ふふ。で、君が手伝って欲しいって言ってたのは、これ?


エメ:そう。だから黙ってて


アクア:絵のモデルが喋っててもいいんじゃない?君が描いてる間暇だし


エメ:動かないで


アクア:口だけ許して


エメ:…少しなら


アクア:空気が気持ちいいね


エメ:外だからね


アクア:桜舞う季節に外で恋人と対面しながら


エメ:違う


アクア:誰もいない2人きりのデートなんていつぶりだろうか


エメ:してないでしょ。仕事よ


アクア:……ま、冗談はさておいて


エメ:ねぇ、細かい所が描けない。やっぱり静かにしてて


アクア:だって、2年ぶりだから。仕事以外で会うのは…もういつぶりかな。デートはもう少し頻繁でもいいよ


エメ:今回、貴方の方からお金は貰ってないけど、こっちは払ってるのよ。そんな関係は仕事だけ。はぁ。起こさなきゃよかった


アクア:で?どうしたの?何かあったんでしょ?何かしら限界になると、こんな形で会おうってくるから


エメ:別に、会おうなんて言ってないわ


アクア:筆が止まってる


エメ:アクアが体勢を変えるから


アクア:ごめんごめん


エメ:本当、息まで止めてて欲しい


アクア:それは無理だなぁ


エメ:動かないでって


アクア:はいはい



アクア:エメ


エメ:何。向こう向いててよ


アクア:どうして僕なの?


エメ:悪い?嫌なら今からやめてもいいけど


アクア:そういう意味じゃないよ。どうして絵のモデルが僕なのかって事


エメ:嫌なのね。じゃあ契約解消。お金返してさっさと帰って


アクア:家の人にしたら良かったのに。モデル


エメ:…それ、言う?


アクア:気になるよ


エメ:…


アクア:家の人が僕を招き入れるのも嫌がったんじゃない?


エメ:しばらくは誰もいないわ


アクア:忙しいの?そういえばニュースで、旦那さんの経営規模が大きくなったとかあったけど


エメ:忙しいに決まってる


アクア:お母様の家の手伝いしろとかうるさくない?…えーっとなんだっけ?見出しにあったんだけどな…確か…世界を…


エメ:世界を牛耳る御局様?


アクア:そう、それ。世界を牛耳る御局様。

そんな噂がたつほど凄いんでしょ?虐められたりしてない?


エメ:うるさいよ


アクア:それ、どっちに言ってる?


エメ:両方


アクア:はは。だと思った。でもエメはエメのやりたいように生きたらいいよ。君の相手さん、画家活動に協力的だったしね


エメ:協力的…そうね


アクア:違うの?絵を描くのにこんな広い庭も貰えてるし、その絵の具、1番質のいい有名店のものでしょ?前使ってたのは手軽とまでは行かないけど何処にでもある物だった


エメ:………そう、なんだ


アクア:綺麗な色。エメの繊細な絵に合ってる


エメ:どうも


アクア:こんなに色んな色があったら迷っちゃうね。何でも出来そう


エメ:……そうかもね。アクアはこの辺の淡い色とかが好きなんじゃない?


アクア:うん。その色が1番好き


エメ:知ってる。後はこの…澄んだ空みたいな色と白が似合うわ


アクア:知ってる


エメ:………ほら、さっさと横向いて


アクア:照れてる君も可愛い。花笑む(ハナエム)姿も愛おしい


エメ:うるさい


アクア:花といえば…この庭の花も見事だ。ソメイヨシノにゼラニウム…あれはフリージアかな?まだ蕾の子がいるけれど


エメ:…何その花


アクア:ほら、あそこの赤色と黄色の


エメ:…へぇ。咲いてたのね


アクア:この後、午後のティータイムでもしようか?紅茶、いれるよ。せっかくのデートなわけだし、この素晴らしい庭を楽しまないと勿体ないよ


エメ:そういうアクアはどうなの


アクア:僕?


エメ:世界的に人気モデル、って肩書きがあるでしょ?今はロンドンの方にいるって聞いたけど?


アクア:世界的画家のエメに依頼されたら、仕事全部キャンセルして優先するに決まってるよ


エメ:それはどうも。怒られておいで


アクア:キャンセルは嘘だから


エメ:あらそう


アクア:ロンドンにまた戻るよ。怒られるのは分かりきってる


エメ:君の相手さんは酷いらしいからね


アクア:あー……まぁ


エメ:…なに


アクア:エメは会った事あるっけ?僕の相手


エメ:あるよ。その人の会社のブランドのイラストを依頼されてますから。明後日はその打ち合わせで嫌でも顔を合わせなきゃいけない。アクアのロンドンの仕事って、そのブランドモデルでしょ?


アクア:YES。ずっと監視されてる気分だよ


エメ:大変ね


アクア:お互いにね


エメ:…ねぇ


アクア:あぁ、ごめん。元に戻すよ。手の位置こうだったっけ?


エメ:…本当に


アクア:息を止めてて欲しい?


エメ:止めてて欲しいよ。もう描き上がるから


アクア:とまればいいのにね


エメ:……


アクア:なーんてね。出来たら見せて


エメ:嫌。見せない。後で燃やすから


アクア:なんで?なら買い取るよ


エメ:お断りします


アクア:お金なら人生で支払うけど?


エメ:そんなに重いモノ要らない。背負える気がしないから


アクア:この庭を使わせてもらってるわけだし


エメ:依頼したのは私なんだけど


アクア:そうだっけ


エメ:いくらかけたと思ってるの


アクア:それがエメの想いでしょ



アクア:……っと、電話きちゃった。ちょっと出てくる


エメ:待って


アクア:どうしたの?


エメ:今は仕上げの最中。動かないで


アクア:……


エメ:息、止めてくれるんでしょ


アクア:…ははっ。はいはい。じゃー……よっと


エメ:あっ!!ちょっと!!キャンパス返して!


アクア:へぇ


エメ:ねぇ返して…!まだ描いて…!


アクア:やっぱ出来てた。僕が話してる時にあまり怒らないから、そんな気はしてたんだけど


エメ:…返して


アクア:昔もこういう感じだったな。夢と同じ。あの時の絵も…


エメ:……もう、いいでしょ


アクア:エメ


エメ:……なに


アクア:僕もだよ。伝わってると思うけど


エメ:………うん


アクア:本当、綺麗だ


エメ:……バカ。本当、息……止めて


アクア:君が望むなら




〜終〜


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