第9話 関係ない魔物を倒しました

<ファントム・ナイフ>

 能力は……幻影。

 その効果は指定した相手の視覚に偽物のナイフを作り出して本物の見分けを付きにくくさせるもの。

 一見すると大して使い物にならないが、相手の視界に偽物を作り出す能力なら、逆に自身の姿を見えなくすることも出来るのではないだろうか。見えているものの中から偽物を見破る事は出来ても、何も無いように見える場所から匂いだけで正確な位置を特定するのは、いくら鼻のきく魔獣といえど難しいだろう。

 それがこのナイフを購入した理由である。

 だが、使ってみないことには本当にそうなるのか分からない。

 サバイバーのスキルでナイフ術も使えるようになったから、このナイフの効き目も試せるし、仮に効果がなくてもナイフ術で逃げ道くらいは作れるようになっているだろう。


「鼻のきく魔獣……昨日の狼とか良さそうだな……狼だし」


 ……うん。

 考えていても分からないものは分からないのだ。潔く聞くことにしよう。


「鼻のきく魔獣……ですか?」

「はい。視覚に干渉する魔剣を手に入れたのでその性能を確かめようと思って……」

「なるほど……でしたらキラー・ドッグはどうでしょうか?この辺りに生息する魔獣の中で、嗅覚に限定するなら1番と言える魔獣ですよ」


 キラー・ドッグ……ドッグ?犬か。

 やめとこうかな?

 ここだけの話、日本に居た頃の僕は犬が大嫌いで見てるだけならいいが近づくとなると話は変わってくる。

 犬を殺す……か……動物愛護団体の人に怒られそうだな。異世界だから関係ないけど。


「分かりました。キラー・ドッグに関係したクエストあります?」

「えぇもちろんありますよ。魔剣の性能を確かめるのなら戦闘もあった方がいいでしょうからシンプルな討伐クエストでいいでしょう。」

「それじゃあそれでお願いします。」


 キラー・ドッグの生息場所はシャドウ・ウルフと同じ森だ。戦闘能力はシャドウ・ウルフが影を使っていない時を10とした時の8くらいだそうだ。

 決して弱くないが、こうも危なげなく倒した魔獣が引き合いに出てくると弱いんじゃないかと思えてきて仕方がない。

 油断だけはしないようにしよう。と心に決め、僕は森へ向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 結論から言おう。僕は悪くない。

 悪くない……はずだ。

 森の中を進んでいると、毛の色が水色の狼の群れと遭遇した。アクア・ウルフと言ったところだろう。昨日のシャドウ・ウルフやフレイム・ウルフの水属性バージョンってところだ。

 こいつら、目が合った瞬間飛びついてきやがったからナイフ術使って真っ二つにしてやったんだよ。

 なのにさ?何もしていない仲間が殺された!!とでも言ってそうな雰囲気で総攻撃を仕掛けてきたんだよ。ほら小学校の時とかに居ただろ?先に手を出したくせに「僕何もしてませーん」ってクラスメイト抱き込んで嫌がらせする低レベルなやつ。

 それを受けたような気がしてならなかったよ。

 結果……全滅させた。


 もう一度、もう一度言おう。


「僕は悪くない!!」

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