どうか、神よ。天に上る魂に安らぎがあらんことを・・・

隅田 天美

『作家』こそ、今、立ち上がれ

 その訃報に接したのは、友人と馬鹿話をしていた時だ。

 いや、正確には速報で『心肺停止』の文字を見て友人は明らかに口数が減った。

 酒を舐めるように、私はサイダーを舐めた。

 そして、スマートフォンが震え、そこにあったニュース記事を読んで友人は脱力した。

 実は、私は事件発生で『心肺停止』の文字を見た時、ある部分では覚悟というか予測はしていた。

 テレビを見ても、ほとんどの番組は編成を変えて特集を組んでいた。

 ふと、師匠の言葉を思い出した。


 先日、わが師のお仲間との酒盛りに私も混ぜてもらった。

 その時、隣の席で酒を飲んでいた師匠に私はある提言をした。

 私も酒に酔っていた。

「師匠、たまには新作や続編を書いてください」

 この言葉に師匠は困ったような、はにかんだような独特の笑みで答えた。

「時間がないからねぇ。それに……」

 残った酒をあおって言った。

「今、この世界は小説以上のことが平然と起こっているから難しい」


 かの時代劇小説『眠狂四郎』などを書いた故・柴田錬三郎は作家のコツを『話をひっくり返してもう一度ひっくり返し、読者を驚かすこと』と書き残している。

 確かに『眠狂四郎』などは一筋縄ではいかない物語である。

 単純な『正義は勝つ』とは安易には言えない。

 もしも、この時代に、シバレン先生(ファンの間での愛称)が生きていたらどう思うのだろう?


 純文学と大衆向け文学。

 古典と現代。

 様々な差はあるが、たぶん、物語を書き始めた人類の始祖たちも思っていたのは、たぶん『読者を楽しませたい』という思いと様々な空想だろう。


 それから、どれだけ時が過ぎたか?

 今、その真価が問われているように思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どうか、神よ。天に上る魂に安らぎがあらんことを・・・ 隅田 天美 @sumida-amami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ