(三)-12

 数馬は折れた刀を見て次に右内の方を見た。右内は顔に笑みを浮かべながら刀を振り上げていた。

 数馬はとっさに前方、右内の脇の方へと飛び込んだ。そして一回転すると、街道に出た。

 右内の方を見ると、すでにこちらを向いて近づいてきていた。

 数馬はすぐに街道を走り始めた。谷川左内が倒れている方に行こうかと思ったが、その手前には右内が立ちはだかっていた。やむを得ず数馬は反対方向に逃げることにした。

 逃げるといっても追われれば、脇差しだけでは対抗しようがない。しかし相手も本来は逃げる立場だ。自分が逃げれば逃げるだろうと思っていた。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る