(三)-8

 数馬は思わず「おい、待て!」と声を上げたが、その声は左内と右内の刀がぶつかる金属音でかき消された。

 二人は何合か撃ち合うと、お互い数歩引き間合いを取った。谷川左内はわずか数合ではあったがすでに肩が大きく上下に動いていた。対して黒井右内は数馬ともやり合ったのに、まだ平然としていた。

 そしてさらにお互い再び刀を打ち合った。純粋な真剣と真剣のぶつかり合いだった。しかし、金属音がたつたびに、谷川の剣撃の精彩が失われていった。


(続く)

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