(二)-9

 その後を、衛守とほかの岡っ引きが追いかけていった。

 左内は、それを見て、倒れている忠五郎のそばへ駆け寄った。忠五郎はもはや虫の息だった。しかし、左内の顔を見ると少しほほえんだ。そして最後の力を振り絞って言った。

「あいつです、頭領は。名は黒井右内……。昔江戸でもめ事を起こして逃げてきた剣豪です」

 そして忠五郎は息を引き取った。江戸から流れてきた剣豪だとは……。

 ともかく、谷川左内は黒井右内を首班とする野盗を追いかけた仲間たちの後を追った。


(続く)

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