堕ちた剣豪と北の剣士
【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名
(一)
中山道を進み碓氷峠を越えて信濃に入り、浅間山からのなだらかな丘陵地帯をしばらく行くと追分宿がある。そこからさらに少し進んだ場所に小田井という小さな宿場がある。
この小田井の宿には小さいながら小田井城という城があり、藩も設けられていた。藩主は笠原志摩介信一郎清治といい、今は参勤交代で江戸にいた。
この藩主が留守の間を狙ってというわけではないが、この藩では一つの問題が起きていた。
それは、山間部に野盗が住み着き、たびたび村を襲ようになったことであった。
野盗とはいっても、主に盗みで生計を立てていた。村の農作物、収穫物や漬け物などを盗み出すのだ。
(続く)
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