第13話「光一の日記」

 二〇二五年五月二十五日


 まったく、いきなり周囲が騒がしくなった。


 未来から来たロボットと、姪、そして夢月むづきと自称する少女。そしてなぜか俺を狙ってくる修正機関〈リライト〉。おまけに夢月は俺の職場に転校してきて、叔父と姪という関係もバレた。


 本当に厄介だ。くるくると表情が変わって、四歳のあの子のように無邪気に懐いてきて——普通ならアラサーの、それも親戚相手に「おじさんおじさん」とくっついてくるわけがないだろうに。まったく。


 今度の日曜日。夢月の身に、何が起こるのだろうか。そして十二年後に。


 父母を失い、叔父も失い、ロボットに乗って戦う。


 十代の少女には重い未来だ。


 未来を変えることは、〈リライト〉にとって不都合なこと。


 だが、変えなければあの子はもう一度、両親と俺を失うことになる。未来は変えられないのだという事実と絶望を、またしても突きつけることになる。


 それは——許しがたいことだ。


 泣き虫なあの子に、また同じ絶望を味わわせることなど、見過ごせるわけがない。


 ……と、ようやく気づいたが。


 すっかり彼女の言葉を信じている前提で書いているな、俺。

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