父の約束

父は、仕事をしてなくて家にいたと書きましたが、ある日帰宅すると珍しくスーツ姿でいました。


『○○、仕事決まったよ』とニコニコ笑っていました。


そして、続けて『別れるにしても、お父さんは、お母さんを辞めさせてからしか出て行かないからね』と私に約束をしました。


『あれを辞めさせないと駄目だから』


父の決意を感じました。


しかし、父は出て行きました。


辞めさせずに、私達を置いて出ていきました。


大人になったら、わかります。洗脳を解くことがどれだけ難しいか…。


しかし、小学一年生の私は嘘をつかれ、捨てられたとしか思いませんでした。


せめて、大人になった私に父から会いに来て謝ってくれていたら、傷は癒えたのかも知れません。


母親か周りからか、父親は仕事もしない人だったから別れたと言う話を聞いた時に、いや?それは違う。と心の中で思っていました。


だって、あの日父親は仕事を決めて帰ってきたのだから…。


仕事に行かなかったのは、きっと母親を辞めさせる為だったのではないかと、大人になったらわかります。


しかし、父が亡くなった今、真実を知る事は二度とありません。


こうだったのかな?ああだったのかな?想像をした所で、真実には辿り着けません。


なので、私の中の父親は一生【嘘つき】から変わらないのです。



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