鍛冶ギルドに追放された落ちこぼれ鍛冶師だけど擬人化できる最強武器の聖剣がついて来たので俺の力で武器に無限効果付与させたり直破の魔眼で破壊したりしながら最強の鍛冶師へと成り上がっていきます！

13 元勇者パーティの実力

　司会の掛け声と共に、リースさんがすぐさま動き出し巨体の男に肉薄する。

「っ！？」

　――ガキィンッ！

　巨体の男は驚きながらもなんとかリースさんの剣を受け止める。

　が――

「あ、あっぶねぇ。お前……見かけによらず、早ぇじゃねぁ」

　――ピキピキッ！

　鍔迫り合いで重なり合っている相手武器の刀身部分から瞬く間に亀裂が入る。

「ふん。余裕そうだけど――」

　――パキィンッ！

　相手武器の刀身が割れてしまう。

「――貴方の武器はそうでもないみたいよ」

「なんだとっ！？」

　驚いた事にリースさんは、物理的に相手の武器を壊していた。

　稽古でも分かっていた事だけどエクスの複製を装備している効果なのか、リースさんには素早さと力強さが兼ね備わっている。

「……っ！？　助太刀する！」

　すぐに相手チームのシーフが二人に介入しようとリースさんに斬りかかるが――

「――君の相手は俺だよ」

≪邪魔するぜ！≫

　――ガキィンッ！

　ゲイボルグでシーフの短剣を受け止める。

「なっ！？　俺の短剣を易々と受け止めるだと！？」

　今まで多くの魔物やエクスやリースと対峙してきたので、目の前のシーフの力があまり強くないのが分かる。

　後ろではリースさんに武器を壊された巨体の男が戦意喪失していた。

「俺の武器がぁぁぁぁ」

　気の毒すぎて、かける言葉もなかった。

「司会さん！　武器が壊れちゃったけど、これって試合的にどうなの？」

「武器破損による勝敗に支障はありません！」

　――念のために俺は司会に尋ねると、司会はすぐに答える。

「なるほど、武器が壊れてもいいのか」

　俺はすぐに目の前のシーフに視線を戻す。

「な、なんだその目は」

　俺の魔眼を使えば、簡単に武器は壊せるけど――

「君たちのリーダー、もう戦う気が無いみたいだから早く終わらせるね」

　俺はそう呟くと受け止めたシーフの短剣を弾き返し、更にゲイボルグを円を描くように振りかぶり石突部分を短剣へと勢いよく打ち付ける。

　――カキィィンッ！

　打ち付けられた短剣はシーフの手から遥か遠くに弾き飛んでいく。

「なっ！」

　さすがに壊すのは気が引けたので、物理的に戦えないようにする

　念のためゲイボルグの穂先をシーフに首に突きつける。

「何者なんだ……お前達は！」

「……ただの鍛冶師さ」

「ぐっ……降参だ」

　俺は答えると、シーフはその場で両手を上げて降参のポーズをとる。

「エクスの方はどうなってるかな？」

　すぐにエクスの方に視線を向けると、魔法使いの子が放つ魔法をエクスが手で受け止めて消滅させていた。

（……エクスって魔法も無力化できるのか）

　相手の魔法使いの子は近づいてくるエクスに焦りながらも、瞬時に背後に回られたエクスに首元に強打を食らい魔法使いの子もすぐに意識を失う。

　一連の流れを見ていた司会の人が声を上げる。

「……そ、そこまで！！　勝者、神聖騎士隊！！！！」

「「「うおぉぉぉぉぉぉ！！」」」

　俺達が圧倒的に相手パーティに勝ったので会場が熱狂の渦に包まれる。

「えぇ～……もう終わりなの？」

　すぐに巨体の武器を物理的に壊してしまったリースさんはつまらなさそうに呟く。

「まぁまぁ……まだ試合はあるから」

　俺がリースさんにそう呟くと、エクスは気絶させた魔法使いの子を抱えたまま近づいてくる。

　その子を相手パーティに渡した後、俺に微笑んでくる。

「さすが、お兄様！　相手を一瞬で圧倒していましたね！」

「エクスもね。……それにしても、エクスって魔法も無力化できたんだ」

「はい、武器庫を保管している異空間を応用した方法で、魔法を異空間へ閉じ込めるのです」

≪妙に居心地が良いあの空間だな！　エクスにしてはいい能力を持っているもんだ≫

　異空間に保管されていたゲイボルグが呟くと、俺も思い出したように呟く。

「あぁ……ゲイボルグを取り出していたあれか。……まぁ、一先ず次の戦いもあるから控室に移動しようか」

　俺達三人は控室へと戻り、それからも続々と他のパーティ同士の戦いが繰り広げられた。

　アバランス達の試合が気になり、俺達は他の観客に交じって試合を少し見学することにした。

「うぉりゃぁぁぁ！」

　――ブゥゥンッ！

　相変わらずゲボルドさんは大きな大剣を軽々と振り周し先陣切って相手を圧倒している。

「ふふ……――風よ、荒れ狂え、全てを扇ぎ給え――”ウインドインパルス”」

　シャワティさんは風の衝撃波を放ち、相手パーティを闘技台の場外にふき飛ばす。

　どうやら場外に出た場合でも負けのようで、ゲボルドとシャワティの二人で楽々と勝負が決していた。

「やっぱり元勇者パーティだけあって、強いな。こりゃあのパーティが優勝しちまうんじゃないか？」

「本当ね。あのパーティが勝つんじゃないかしら？」

（やっぱり皆、元勇者パーティの強さは認めているのか……でも、アバランスは剣を抜かずに終わっちゃったな……どんな剣なのか見ておきたかったけど）

　俺はそんな事を思いながら、隣にいたリースさんに話しかける。

「相変わらず強いね。あの二人」

「本当ね。……まぁ、マイオスも一緒にダンジョン攻略時に見ていたから分かると思うけど、あのパーティはあの二人が異様に強いモノ。戦う時は二人の対策を考えないとね」

　それからも続々と御前試合は進んでいき、俺達の神聖騎士隊も順調に二回戦・三回戦と勝ち上がっていく。

　そして今、闘技台に立つのは俺達神聖騎士隊と――

　――アバランス率いる元勇者パーティの面々だった。

「いやぁ……すごかったよ、マイオス君。決勝まで勝ち上がってくるなんて」

　アバランスは怖いぐらいに以前と同じような言動で接してくる。

「……どうも」

「さすが、あのダンジョン深部で死なずに生き残っただけはあるね。君たちの戦いっぷりを見ていたけど、勝ち上がってくると思っていたさ」

　――シャキンッ！

　悠長に話すアバランスは、決勝までずっと抜かずにいた漆黒の剣を鞘から抜く。

「……この時を待っていたよ」

　禍々しいオーラを漂わせる漆黒の剣は俺に向けられる。

　すると――

≪っ！？　あんちゃん、気を付けろ！　あの剣……過去の俺と同類の存在だ≫

（……え？　それってまさか）

≪あぁ……あの剣には呪いがビッシリしみ込んでやがる！　気を付けな、少しでも攻撃を受けると生気を吸われるぞ！≫

（えぇ！？）

　俺は驚きつつも、二人にその事を共有する。

「エクス、リースさん！　アバランスの剣には気を付けて！」

「えっ？　ど、どういう事よマイオス」

「……お兄様。私も感じます。あの剣、尋常じゃない程の呪いが付与されています」

「あぁ。エクスが言う通り、あの剣はヤバい！　……アバランスは俺が引き受けるよ！」

「だ、大丈夫なの、マイオス？」

　なんとなく状況を理解したリースさんが困惑した表情で尋ねてくる。

「お兄様……」

　エクスも少し不安そうな表情を浮かべる。

「……うん。二人とも任せて！」

≪安心しなエクス！　呪い耐性がある俺だからこそ戦えるんだ≫

≪……わかりました。お兄様をお願いします≫

　エクスとゲイボルグのやり取りを聞く中、リースさんもなんとか納得してくれる。

「よくわかんないけど……わかったわ。それなら私はゲボルドを担当するわ」

「それでは私は、あの赤髪の魔法使いを相手にしましょう」

　担当する相手が決まると、司会は掛け声を上げる。

「それでは両者構え……御前試合、決勝戦――」

　俺は不敵な笑みを俺に向けて来るアバランスを見据える。

「――始めっ！！」

　司会の掛け声と共に、俺達は担当する相手の方へと向かって駆け出した。