鍛冶ギルドに追放された落ちこぼれ鍛冶師だけど擬人化できる最強武器の聖剣がついて来たので俺の力で武器に無限効果付与させたり直破の魔眼で破壊したりしながら最強の鍛冶師へと成り上がっていきます!

笹塚シノン

01 落ちこぼれ鍛冶師、美少女と出会う

 王都サントリアにある大きな鍛冶ギルドの一角。

 武器を求める冒険者で賑わう中――


 ――ガシャーンッ!


 鍛冶ギルドに所属していた俺の目の前に壊れた武器が無造作に置かれる。


「マイオス! お前はまともに武器も作れない上に人様の武器を壊してしまった! その責任をもって、俺達のギルドから出て行って貰う!」


 仏頂面のギルドマスターのボヤスン・ドリトがそう叫ぶと、副長のライケル・スペンサーも眼鏡をキラッと光らせながら俺に視線を向けてくる。


「……そうだな、国王に選ばれた勇者の武器を壊してしまうなんて……もう言い訳はできまい! 身ぐるみを置いて出ていくのだ! !」


 二人は俺を親の仇と言わんばかりの視線を向けて鍛冶ギルドから出ていくように告げてくる。


「……なっ! そんな……」


 足元に置かれた武器を壊した記憶は全くない。

 俺は全く身に覚えのない事を言われ困惑していると――


「……うわ、またあいつ怒られてるぜ」

「ははっ! 見てて笑えるぜ。全く、無様な事だ」

「本当だな、いつも目障りなんだよ。あのチビは」


 ――ギルド長達の大声により、周りの冒険者たちも俺の事を蔑んだ視線を向けてくる。


「……っ」


 グッと歯を噛みしめ向けられる視線に耐えていると、ボヤスンが俺を乱暴に掴んでくる。


「さぁ、お前はもう用済みだ! 身ぐるみ脱いですぐに出ていけ!」


 ボヤスンは俺の衣服を乱暴に剥ぎ、無一文の下着姿にされてしまう。

 そして俺は首を掴まれ鍛冶ギルドの入り口付近まで連れられ、思いっきり尻を蹴飛ばされて鍛冶ギルド外に追い出されてしまった。


「うぎゃっ」


 背後の鍛冶ギルド内では、盛大な笑い声が鳴り響くのが聞こえる。

 地面に落ちた眼鏡を拾って付け直す。


「はは、無様だな。お前なんてどこかで野垂れ死ぬがいい!」


 ――バタァンッ!

 そう吐き捨てたボヤスンは扉を勢いよく閉ざす。


「……うぅ」


 這いつくばって起き上がり周りの視線が集中する中、俺は下着姿のまま行く宛もなく歩き始めた。




 先ほど追い出された鍛冶ギルドは、元々既に亡くなっている俺の親父が作ったギルドだ。

 伝説の鍛冶師として名を轟かせた親父が死んだ後も俺は鍛冶ギルドで武器の手入れなどを担当して親父の息子だというお情けで鍛冶ギルドに所属させて貰っていた存在だった。


 ――それもそのはず、俺はまともに武器を作り出す事が出来ない落ちこぼれ鍛冶師だったからだ。




 タッタッタッタッ!

 歩きながらそんな事を考えていると、背後から駆けてくる足音が聞こえて来た。


「主様! 待ってください!」


 足音が近づいてくると、背後から女性の声が聞こえた。


「……えっ?」


 振り返るとそこには、見たことのない銀色に輝く長い髪に碧眼が特徴的な、白銀の軽装を身にまとう美少女が俺に視線を向けていた。


「わわっ!」


 すぐさま今の俺の姿を思い出し、手で隠しながら尋ねる。


「……えっと、誰だっけ? ……それに、主様ってどういう事?」

「あっ! この姿でお会いするのは初めてでしたね? 私の声は覚えていませんか?」


 言われてみれば、その美少女の声は親父の形見である聖剣エクスカリバーを手入れをしている時に聞いた声と酷似していた。

 俺にはあらゆるモノの声を聞くことが出来る能力があるからだ。


「……そういえば、聞いたことあるような……」


 でも、まさかな。


「はい! 私はいつも主様にお手入れをして頂いていた聖剣エクスカリバーです!」 

「……嘘だろ!? そんな事って……君、普通の人にしか見えないけど……」

「この姿は私をお作りになったロイダース様の力によるものです」


 突然親父の名前を言われて、俺は体がビクつくのを感じる。

 それほど今まで親父と比較されてきた事に体が拒否反応を示しているようだ。


「……親父の力って」


 俯きながらなんとか言葉に出す。

 親父はもういないし、目の前の美少女が何を言っているのか全く理解できなかったが……俺は肌寒い事を思い出す。


「ハっ……くしょんっ! はぁ……ちょっと場所を変えてもいい?」

「あ、これは失礼しました! その姿では風邪を引いてしまいますね。これを着てください」


 すると、少女は空間に穴をあけて、その異空間から軽装を取り出してくる。


「え……」

「さ、これを着て体を温めてください」

「ちょっ……」


 どういう原理で防具を取り出したのか分からないまま、俺は軽装を受け取る。

 いろいろ聞きたい事があったけど、一先ず渡された軽装を着る事にした。


「……ありがとう、これでひとまず寒さは凌げそうだよ」

「それはよかったです、主様!」


 彼女はとても嬉しそうに笑顔を浮かべる。


「えっと……君の名は?」

「私はエクスカリバーという名がありますが、長いのでエクスとお呼びください」

「エクス……だね。わかったよ。……それでエクス、さっき防具を取り出した方法って何なの?」

「はい。私には異空間に武器や防具を保管できる能力があるのです。私が主様を追いかけようとした際、鍛冶ギルドに保管されていた数多くの武器防具も主様の元へと行きたいという願いを聞き、私と共に主様の元へと来たのです」

「そんな事って……その武器防具って……まさか鍛冶ギルドに保管されている全て?」

「はい! 私も含めて主様を慕うモノ達は多いですからね!」


 相変わらずエクスが言っている事が想像の斜め上すぎて、頭が追い付いていかなかった。

 でも、武器を作り出す事が出来ない俺だったが、一度作り出された武器の性能を高める能力は持っており、多くの使われなくなった武器を再び使って貰えるようにしてきた事は事実だ。


「そう……なんだ。でも、せっかくついてきて貰って悪いけど、俺には養うお金もないし、見ての通りギルドを追い出されたばかりなんだ。エクス達を養っていけるとは思えないよ」


 すると、エクスは俺の手を両手でガシッと掴む。


「なら、新しく主様のギルドを作ればいいのです! 私をお作りになったロイダース様の様に!」


 目を輝かせるエクスを見ていると、不思議と俺にも出来そうな気になってくる。

 それほど、俺の両手を掴むエクスからは不思議な力が流れ込んでくる気がした。


「親父のように…………わかったよエクス。どうなるか分からないけど……俺、頑張ってみるよ!」

「はい! 私の主様!」


 こうして鍛冶ギルドを追放された俺は、一人の美少女と共に新たなギルドを作る一歩を踏み出すのだった。

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