Day.13 切手

 ポストに僕宛ての封筒が入っていた。

 真っ白な封筒に住所はなく、僕の名前だけ。

 しかし丁寧に切手だけは貼られている。

「二円?」

 数字が『二百』と書いてあるから『二百円』なのかと思ったけれど、横に書いてある旧漢字は『二圓』とあるから、この切手は『二円』なのだろう。僕の知っている『二円切手』といえば発行当時に可愛いと噂になった白くてもふもふのエゾユキウサギだ。だけど、この切手は花を持った手で今まで見たことない。

 その手に何か違和感がありつつも部屋に戻った僕は手紙の封を切る。

 中にあったのは白い便箋。書かれていたのは『好きです。今夜十時に〇〇公園に来て欲しいです』の文字。これは、ラブレターというやつなのか!?

 浮かれる僕。しかし、心のどこかで警鐘が鳴る。

 貼られた切手。スズランの花を持った綺麗な手の柄の切手。

 気になってインターネットで切手を調べると、意外と直ぐに切手のことは分かった。それと同時に僕が感じていた違和感の正体も。

 僕は〇〇公園には行かなかった。




【日本郵便司法保護記念日二円切手】

昭和二十二年九月十三日に三百万枚発行された切手。

図柄には「鈴蘭を持つ女性の手」が描かれているが、女性の小指が少し長いということから「お化け小指切手」と呼ばれることもある。

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