5.番外編
「これからどうしようか。」
濡れた髪の雫を振り払うように思いっきり揺らした。
ーーー・・・
レオは呆れながらもいつも私のお願いに答えてくれた。
いつも優しいレオに聞きたかった。
どうしてそんなに優しいのか、どうしてそんなに私の要望に答えてくれるのか。
不思議でならなかった。
でも、最後はちゃんと拒んだね、。
偉いよレオ。
なんてことを実は考えていた。
・
・
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私の毎日の目標は我儘を言うだった。
レオに聞いてほしかった。
私の願いを全部。
レオはいつも呆れながらも最後は笑って受け入れる。
あぁー今日もそうだ。
そんなに優しいのはダメだよ。
こんな我儘なお姉さんの言うこと聞いちゃったら誰も救われない。
「しょうがないですね。ちょっとだけですよ。」
そう言って手を差し伸べてくれる。
「照れてるの?」
「照れませんよ。恵美さんの手の方が熱いじゃないですか?」
「可愛くないなぁ〜。それにこんな暑いんだから手が熱いのも当たり前じゃない?」
正論言われると黙ってしまう。
こんな軽い口を叩いていても内心ではやや焦っていた。
ヤバッ気付かれてる!?
恋人みたいに手を繋ぎたいとか冗談半分で言うとレオは結局それに「いいよ。」と言ってしまう。
そんなレオを見ていると不安になる。
レオはどこまで受け入れてしまうのだろうか。
そして私はどこまで我儘を言ってしまうのだろうか...
・
・
・
「一緒に海へ飛び込もうていう我儘は聞いてくれなかったか。」
知らないふりしてた。
レオが大事だったんだって事。
ーーー・・・
「未来は分からないが、分からないなりに生きていくしかないのだ。運命の人などどこにもいない。状況によって、持っている力で、行動で変わるこの世界で何を信じてどう生きるかは我々次第。何を好きになればいいのか何を嫌いになればいいのか分からないと言う者はきっと一番大切なモノを失った者だ。どうしてそれを失う羽目になってしまったのか。それすらも分からず手を伸ばすだけで救いようがあるまい。また新しい何かを探すしかないからだ。運命など信じてはいけない。運命など今次第で変わる。それだけを肝に銘じておけ。」
昼下がりの陽の光が丁度差し込む位置にある私の部屋である本を読んでいた。
レオが一度だけ小説と漫画以外の本をあの崖に持って来た事があったので気になって探して読んでみたのだ。
書物に書かれた文章は未来の有り様を示したものだった。
これを書いた人は、「運命の人がいると信じるか」と言われたら100発100中「No」と答える。
なんとも夢がないつまらない奴だ。
だけど、未来はどうなるのか分からないのには激しく同意する。
「好きでいたかったな。」
清冽な涙を頬に流して、流して、思い出に浸るようにトロフィーを素手で触る。
金で輝くトロフィーで触るとやや濁ってくる。
飛込競技優勝という事実は変わりはしないけど、この懐かしの暖かな心は終わりを告げた。
そしてもう一つ思い出すレオの存在。
「元気でね。」
8月31日。
夏休みももう時期、終わりを告げる。
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