4.終結

〜終結〜


「レオ、レオーーー!!!」

木霊する彼女の雄叫びは虚しく。

「なんで、なんでいないの?なんで、なんでよ...。」

いつもの時間に、いつもの場所に来てもレオはいない。

いないのだ。

どれだけ呼んでも、どれだけ叫んでも、最後には涙声になって空中に消えた。

泣くしかなかった。

膝から崩れ落ち、さやかな潮風が髪を揺らす。

泣きべそって勢いよく顔をあげた。

顔をあげて思いっきり走り出した。

思っいっきり走り出して...


タンッ


―――・・・


「恵美さん!」車があの場所の真ん前に止まり、扉をバタンッとすごい音を鳴らせて周囲の人々を驚かす。

あの崖を見ると全てを悟った。

遅かったのだ。

恵美さんはいつも言っていた。

落ちるのは一瞬なんだと、第三者から見ると数秒の出来事なんだと。

恵美さんは空高く飛んでいた。

それは絵画や写真なのではないかと錯覚してしまうほど、1秒1秒がやけに長く感じられた。


―――・・・


ボチャンッ


私を歌っていく醜い透明。

これで全てが終わった高校2年の夏。

「さよなら。」の合図が轟いて、そのまま時が流れた。

制服はどんなに汚れても構わない。

君はここにいなかったのだから、飛び出しても捕まらない...。


〜本当の終結〜


ガタンゴトン・ガタンゴトン・ガタンゴトン

電車が目の前で通り抜けた。

何一つあの頃と変わらないような。

そんな感想が浮かぶ。

俺は変わりました。

恵美さんはどうだろうか。

今もここにいるのだろうか。

助走つけてタンと音立てて空中へ飛びだって...。

恵美さん、今日はどんな日なのか知っていますか?

ただ青空と広い海が綺麗なだけのなんの変哲のない日常ですよ。

彼女のように海に飛び込みました。

高い高い崖の上から飛び込みました。

恵美さん、今どこにいるんですか?


ジャボン...


ゆっくりと目を開けるとあるものが目に飛び込んできた。

あるものが岩に引っ付いていた。

よくこれ波に流されなかったな。

「ははっ」ぶくぶくと二酸化炭素が泡となって出ていきながら自分の表情をつねる。笑っていた。

俺はその岩にひっついた黄緑色のブレスレットを撫でるだけで十分だと思った。

俺は嘘をついていました。

私は演じていました。

自分自身に

自分を

彼女自身に

彼を

だから俺は

だから私は

もう

もう


「「会わない。」」

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