日夜人の顔を映すトイレの鏡の、人知れない孤独な問わず語り。
意思や人格を持った鏡、という意味では確かに現代ファンタジーで、しかしどこか寓話のような雰囲気のお話です。
というのも、主人公たるこの鏡さん、あんまり好ましい性格ではないというか……。
なかなかに傲岸不遜、いろいろ勘違いしたまま人のことを言いたい放題言って、なんだか童話に出てくる偏屈なキャラクターのよう。
さりとて所詮は鏡、あれやこれやを学習する機会もない以上は仕方のないことなのかな、と思うと、ちょっぴり切なくもあります。
とはいえ、当然ずっと空回りしっぱなしというわけではなく、最後に答えのようなものにたどり着くのですけれど。
具体的には内緒です(ネタバレになるので)。
独特の不思議な読み味が楽しいお話でした。