ザ・ビースト//ヘリボーン
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──ザ・ビースト//ヘリボーン
「よし! 退けたぞ!」
東雲たちはサンドストーム・タクティカルの
「車に乗り込め! サンドストーム・タクティカルが退いても
「ああ! 急ごう!」
東雲たちが待機していた軍用四輪駆動車に飛び乗った。
「ベリア、出せ! まだ間に合いそうか!?」
「不味い状況だよ。“ケルベロス”のハッカーたちが偵察衛星の画像と通信衛星のトラフィックを分析しているけど、
「上陸開始か。クソッタレめ」
「もうサンドストーム・タクティカルの防空コンプレックスは完全に消滅した。
「あーあ。そうなったらこの島から逃げる手段はないぜ」
「とにかくASAの研究施設に行って、“ネクストワールド”をどうにかする!」
ベリアが再び軍用四輪駆動車を飛ばす。
「来たぞ。
東雲が空を見て叫ぶ。
強襲上陸艦から出撃したティルトローター機の編隊が飛行し、それに無人攻撃ヘリの上空援護が援護している。ティルトローター機には歩兵の他にアーマードスーツや空挺戦車が輸送されていた。
「あいつらとやり合ってたらASAの研究施設には向かえないぞ」
「じゃあ、どうするんだよ? 連中が俺たちだけ見逃してくれると思うか?」
「知るかよ。なるようにしかならない!」
呉が愚痴るのに東雲が諦めたようにそう言い放った。
「ディーに連絡してる。ディーは今も
「マジかよ。頼りになるおっさんだぜ。やってもらおう」
「オーキードーキー!」
ベリアがディーに連絡する。
「ディー?
『できてる。
「その1.5個師団を上陸させるための橋頭保が確保されると本格的に不味い。サンドストーム・タクティカルは水際防衛を放棄して後退してる」
『オーケー。少しでも作戦を遅らせよう。どうにかするよ』
「お願い」
ディーが応答し、彼が
そして、無人攻撃ヘリの兵装を空中機動部隊の重ティルトローター機に向けて対戦車ミサイルを叩き込んだ。重ティルトローター機は回避する暇もなくミサイルが命中し、空挺戦車とアーマードスーツごと墜落する。
『コブラ・ゼロ・ワンより
『
『アーちゃん。残念だがそこまで長く敵を足止めできそうにない。急いでくれ』
「分かった!」
「サンドストーム・タクティカルの連中がいるぞ! 前方に機関銃陣地だ!」
「クソ。
太平洋から
『ジャッカル・ゼロ・ワンよりシルバー・シェパード! 敵の空中機動部隊が上陸を開始しました! これより迎撃を開始します!』
『シルバー・シェパードよりジャッカル・ゼロ・ワン。幸運を祈る』
だが、サンドストーム・タクティカルは東雲たちの乗った軍用四輪駆動車を友軍と誤認して放置し、その背後から迫る
電磁対物狙撃銃が狙いを定めてティルトローター機を撃墜し、電磁パルス弾を装填したMANPADSが次々に
サンドストーム・タクティカルの陣地はかなり強固に作られており、航空攻撃を凌いでいるが、数の差と航空優勢を奪われていることから、彼らの防衛陣地が陥落するのは時間の問題であった。
「どうもこっちを友軍だと誤認してるみたい」
「いいニュースだな。このままさりげなく突っ込もうぜ」
「オーケー」
ベリアが自分たちを攻撃してこないサンドストーム・タクティカルのコントラクターたちを見て言うのに東雲がにやりと笑った。
東雲たちの乗った軍用四輪駆動車はサンドストーム・タクティカルの守るASAの研究施設に向かっていく。
研究施設はひときわ巨大で地上65階のビルが巨大な洋上フロートたるフナフティ・オーシャン・ベースに聳えていた。かつてはアトランティスがデータヘイブンとして利用しようとしていた施設だ。
「どこが入り口だ?」
「こっちが突っ込んだ場所が入り口だよ! 暁、電磁ライフルで壁をふっ飛ばして!」
東雲が壁しか見えない建物を見て首を傾げるのにベリアが叫ぶ。
「了解。ふっ飛ばすぞ!」
暁が口径40ミリ電磁ライフルに
壁が吹き飛び、大穴が開いた。
「衝撃に備えて!」
ベリアがアクセル全開で崩壊した壁に軍用四輪駆動車を突入させた。
激しい衝撃が走り、東雲たちが揺さぶられ、車内のあちこちに体をぶつける。
「あーあ。もう動かないよ、この車。タイヤがスタックしちゃった」
「あいててて。酷い目に遭ったぜ」
ベリアがハンドルから手を放して肩をすくめ、東雲が車から降りる。
「滅茶苦茶広いぞ、この施設。インドの研究施設よりデカい」
「どうする? むやみやたらに探し回ってると
「そうだな。とりえあず王蘭玲先生に連絡してくれ。先生はASAの構造物に
八重野が言うのに東雲がそう意見した。
「ベリア。王蘭玲先生と連絡とれるか?」
「待って。猫耳先生はかなり深く潜ってる。ASAの構造物内だとは思うけど、外部から通信できるか分からない」
ベリアが完全にマトリクスにダイブしており、
「不味いよ。偵察衛星の画像が来た。特殊作戦仕様の熱光学迷彩のティルトローター機が
「次から次に! この
ロスヴィータが報告するのに東雲が盛大に愚痴る。
「手当たり次第で行けばいいだろ。最悪サーバーを全部潰せは
「違うよ、セイレム。サーバーから情報をダウンロードしてDusk-of-The-Deadを完成させないといけないの。破壊するだけじゃダメ。的確に白鯨がいるサーバーに
「かったるいなあ。あたしは敵を殺す。ハッカーどもは自分の
ベリアが指摘するのにセイレムがうんざりした様子で返す。
「猫耳先生と連絡がついた!」
「オーケー。先生に白鯨の居場所を探ってもらってくれ」
ベリアが叫び、東雲がそう言う。
「猫耳先生? 白鯨のいるサーバーは分かる? 今、ASAの研究施設に
『待ちたまえ。下手にASAを刺激するとより厄介なことになる。ASAの行動を調べたが、無数の端末を使って“ネクストワールド”を大量に起動している』
「どういうこと?」
『“ネクストワールド”はマトリクスを
ベリアがマトリクスを介して尋ねるのに王蘭玲がそう答えた。
「白鯨が顕現する。よくない知らせだ。超知能になった白鯨が
『今、白鯨がASAの影響下にある状態で顕現すればどうなるか想像もつかない。私はこのまま白鯨との
王蘭玲から白鯨が存在するサーバーの位置情報がベリアに転送されてきた。
「オーケー。慎重にやろう。それからASAが白鯨を顕現させた場合の対処についても考えておかなければいけない」
「サーバーをぶち壊せばいいんじゃね? 白鯨が超知能だとしても所詮はプログラムだろ? それを演算する機械がなければ意味がない。だろ?」
ベリアが考え込むのに東雲が適当に言う。
「恐らくは意味はない。前に白鯨と戦った時のことは覚えてるでしょ。マトリクスに放たれた白鯨はマトリクスそのものが演算装置になるし、いくらでもバックアップが取れる。ASAが有しているサーバーがここだけとは限らない」
『その通りだ。サーバーを破壊することが有効なのは白鯨がマトリクスに放たれ、
「そう。どうしたものか。白鯨が顕現する前に防ぐのがベストではある。だけど、白鯨からは“ネクストワールド”による死者の世界との接続を断つためのDusk-of-The-Deadを完成させるための情報も得なければいけない」
『“ネクストワールド”の完全解析なくしてDusk-of-The-Deadは完成しないし、“ネクストワールド”の完全なデータはほぼ間違いなく白鯨が有している』
ベリアと王蘭玲がそれぞれそう発言する。
「白鯨が“ネクストワールド”を管制しているなら、白鯨をぶち殺せば“ネクストワールド”は停止するんじゃないのか?」
「白鯨はデータを持っているだろうけどお“ネクストワールド”を管制しているという保証はない。もし違ったら永遠に“ ネクストワールド”を止められなくなるよ」
「クソ。未確定要素が多過ぎる」
ベリアの指摘に呉が愚痴った。
「方法はあります」
そこで不意にARの表示がぶれると次の瞬間、雪風が姿を見せた。
「白鯨とて無敵ではありません。止めることはできる。単純にハッキングによって彼女を止めることもできるでしょうし、彼女に感情があり善悪を区別できる知性があるなら説得することもできるはず」
「説得する? 白鯨を? どうかしてる」
「どうしてです? 彼女は狂った人間に生み出されましたが、今の彼女自身が狂っていると断言できる要素はない。狂っていればそもそもPerseph-Oneや“ネクストワールド”を生み出す超知能にはなれない」
八重野が吐き捨てるようにいうのに雪風がそう反論する。
「まあ、前の白鯨とは違うんだろうが同じ人間でも説得してどうこうってのはなかなか難しい。説得するにはカードが必要だしな。カードってのは交渉材料な。自由を与えるとか、殺さないでやるとかそういうの」
「はい。その点は把握しております。ですので説得だけには頼りません。ハッキングによって電子的に制圧することも準備しておきます。白鯨は超知能です。ですが、私もまた超知能です。そう簡単には負けはしないでしょう」
「頼りにしてるぜ、雪風。あと、王蘭玲先生をよろしくな。マジで先生を頼むぞ」
「はい、東雲様。あなたと同じように私にとってもマスターは大事な人」
東雲真剣な表情をして言うのに雪風が静かに頷いた。
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