カウンターアタック//追撃戦
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──カウンターアタック//追撃戦
東雲も加わり、サンドストーム・タクティカルの
「セイレム、死ぬなよ」
「お前もな、呉」
東雲や八重野と違って呉とセイレムは何ら特殊な力がない。
東雲のように傷を回復させることも、八重野のようにどんな状況になろうと死なないこともない。彼らは己の腕だけを信じて、“ネクストワールド”で魔術を使うサンドストーム・タクティカルと戦っていた。
「超電磁抜刀なら抜ける!」
呉がサンドストーム・タクティカルの
一度は障壁に阻まれかけるも、超電磁抜刀の威力の方が上回り、障壁を切り裂いて敵の
「あたしもやってやろうじゃないか」
セイレムも超電磁抜刀を使ってサンドストーム・タクティカルの障壁を切り裂き、
『いいか。どうあっても
『自分のために死ぬな。戦友たちのために死ね』
サンドストーム・タクティカルのコントラクターたちは何があっても撤退しようとはせず、執拗に東雲たちを攻撃し続けた。肉薄する東雲たちに超高周波振動ナイフで応戦し、同時に電磁ライフルを叩き込む。
「クソ。何で引かない」
「こいつら、死兵だ。死ぬつもりで戦ってやがる」
「面倒な」
呉が言うのに東雲が呻いた。
「東雲、このままこいつらと戦い続けるか? それとも大井海運本社ビルに向かった連中を追うか?」
「背中を見せると怖いぞ。ここで叩いておかなきゃならん」
「分かった」
東雲がそう言い、八重野が流石は不死身という動きで恐怖することも怯むこともなく威勢よく突撃して
「ベリア。サンドストーム・タクティカルの連中が部隊を分けて行動し始めた。一部が大井海運本社ビルに向けって、こっちは捨て駒にされた連中とドンパチしてる。大井統合安全保障はまだかどうかと大井海運本社ビルの状況を教えてくれ」
『オーキードーキー。大井統合安全保障は
「オーケー。それから忘れてたけどサンドストーム・タクティカルのドローンは?」
『追跡してる。ロスヴィータが撃墜を試みてるけど上手くいかない。あのドローン、近接防衛用の高出力レーザーを装備してる』
「面倒なもんばっか使うな、連中」
『どうにかしてみるから頑張って』
「はいはい」
ベリアがそう諭すのに東雲が飛んできた大口径ライフル弾を“月光”で弾きながら軽く返した。
「“月光”! この連中も片付けるぞ!」
「任せるのじゃ!」
東雲と“月光”の少女がサンドストーム・タクティカルの
「東雲が暴れてるな」
「景気良さそうで何よりだ。こっちも片付けるぞ」
「ああ」
セイレムと呉も戦闘を継続。
『絶対にこいつらを進ませるな。俺たちが時間を稼ぐんだ』
『もう俺たちには帰る場所はない』
死兵と化したサンドストーム・タクティカルのコントラクターたちが必死に応戦し、東雲たちを足止めし続けた。
「皆殺しだ」
八重野が恐れることなく突っ込み切り捨てていく。死体が積み重なり、ナノマシンの混じった機械化ボディの半透明の循環液が周囲に散らばる。
「セイレム! 気を付けろ! 手榴弾を持った奴が突っ込んでくる!」
「死にたいならひとりで死ね!」
呉が叫ぶのにセイレムが突撃してきた
「滅茶苦茶やるぞ、こいつら。道連れにするつもりか」
「さっさと殺し尽くすぞ。死にたいなら殺してやれ」
呉とセイレムがそう言い合って、残るサンドストーム・タクティカルのコントラクターたちを相手にする。
「いつまでも俺たちを足止めできると思ってんなよ。そっちの魔術はもう効かないんだからな!」
東雲が
そこで再び東雲の脇腹の肉がごっそりと抉られ、内臓も弾けた。
「また、こいつら! いい加減にしやがれ!」
東雲は傷を身体能力強化で強引に回復させつつ、攻撃を放ってくるサンドストーム・タクティカルの部隊を切り刻む。
「もう少しだ、主様!」
「ああ! 最後まで油断せずにやるぜ!」
“月光”の少女もあらゆる攻撃を無力化して一方的に敵を斬り捨て、東雲も攻撃を継続した。サンドストーム・タクティカルの
『ジャッカル・ゼロ・スリーよりジャッカル・ゼロ・ワン。我々は先に行きます。どうか幸運を!』
そして、最後の
「クソ! マジかよ!?」
東雲が狼狽えつつも“月光”を射出して
そして、爆発。
周囲が
「東雲! 無事か!?」
「ああ。なんとかな」
八重野が声をかけるのに東雲が満身創痍の状況で返した。肉が抉れ、手足がもげているが東雲は生きている。
「相変わらず化け物染みてるな、大井の」
「うるせえ。こちとら勇者やってたんだ」
セイレムが再生する東雲を見て言うのに東雲がセイレムを睨んだ。
「大井海運本社ビルに向かった連中を追いかけるぞ。急いで──」
東雲がそう言ったとき突然爆発が起きた。
「な、なんだっ!?」
『東雲! 上空にドローン! 対戦車ミサイルで攻撃してる!』
「クソ、どうにかできないのか?」
『待って。大井統合安全保障の無人戦闘機が来てる。撃墜するつもりだ。それまで何とか耐えて』
「あいよ」
東雲が上空を睨む。
「おっと! また来たぞ! 迎撃する!」
サンドストーム・タクティカルのドローンが発射してきた対戦車ミサイルを東雲が“月光”を投射して仕留める。対戦車ミサイルが空中で爆発し、爆炎が空に広がった。
『大井統合安全保障の無人戦闘機が到着した。ドローンを狙ってる』
「さっさとやってくれよ」
上空を飛行していた軍用ドローンが大井統合安全保障の無人戦闘機から空対空ミサイルを喰らって爆発し、墜落していった。
「オーケー。片付いた。大井海運本社ビルに向かうぞ!」
「ああ」
東雲たちは大井海運本社ビルに向かったサンドストーム・タクティカルの部隊を追いかけてセクター2/1の通りを進んだ。
『ジャッカル・ゼロ・ワンよりシルバー・シェパード。攻撃を実行します』
『シルバー・シェパードよりジャッカル・ゼロ・ワン。速やかに実行し離脱せよ。大井統合安全保障の
サンドストーム・タクティカルのC4Iに通信が流れる。
それはベリアにも傍受されていた。
『東雲。サンドストーム・タクティカルが攻撃を実施するって。何をするか分からないけど、十分に気を付けてね』
「何やるつもりだよ、連中」
ベリアからの連絡に東雲が首を傾げた。
「主様。この先から嫌な感じがする。このざわめいた空気は……大規模な攻撃魔術の前兆じゃぞ。ゼノン学派の得意とするものじゃ」
「マジで魔術使ってるんだな。しかし、戦闘と破壊の魔術であるゼノン学派の魔術となると相当やばいぞ」
“月光”の少女が険しい顔をして告げるのに東雲が呻く。
そして、東雲たちがもうすぐ大井海運本社ビルに到着しようとしていた時。
大地が揺れた。
「地震!?」
「違う。こいつは攻撃魔術だ。やりやがった、連中!」
呉が慌てるのに東雲が叫んだ。
大地が激しく振動し、高層ビルの耐震構造が作動しビルが揺れる。それから激しい破砕音が響いてきて、巨大な構造物が崩壊する音が聞こえて来た。
「どうなってる……」
「ビルが。大井海運本社ビルが崩れかけてる」
セイレムが揺れる大地の中で周囲を見渡すのに八重野が呟くように言った。
あの巨大な大井海運本社ビルが崩壊しかかっていた。
「おいおい。やばくないか……」
「やばいに決まってるだろ。ここにいると巻き込まれる。一度引くぞ」
呉が呻くのに東雲がそう言って大井海運本社ビルから離れる。
『ジャッカル・ゼロ・ワンよりシルバー・シェパード。攻撃は成功。白鯨由来の技術については確認が完了した。これより撤退します』
『シルバー・シェパードよりジャッカル・ゼロ・ワン。スコーピオン・ゼロ・ツーが迎えに行っている。合流し、離脱せよ』
そして、サンドストーム・タクティカルが撤退を始める。
『チャリオット・ゼロ・ワンより
『
ここで大井統合安全保障の
ティルトローター機と無人攻撃ヘリが大井海運本社ビルの上空でしばしホバリングしたのちに、遠くへ向かっていった。
「やれやれ。これで
「
「それぐらいしかできることはなさそう」
呉が言い、東雲が同意する。
「ベリア。逃げたサンドストーム・タクティカルの連中を追いかけられるか?」
『できるけど、大井統合安全保障の
「ジェーン・ドウに一応
『オーキードーキー。どうにかしましょう』
ベリアがマトリクスで偵察衛星及び宅配ドローンの映像をハックして手に入れ、それをジャバウォックとバンダースナッチが解析してサンドストーム・タクティカルの向かう先を分析した。
『これがサンドストーム・タクティカルの逃走ルートだよ。足を準備しようか?』
「ああ。よろしく」
東雲がベリアにそう言うとセクター2/1をバンが走って来た。
「来たぞ。乗り込め。サンドストーム・タクティカルを追撃する」
東雲たちがバンに乗り込み、サンドストーム・タクティカルを追撃し始める。
「飛ばせ、飛ばせ。もっと速度出せ。連中が逃げちまうぞ」
「出してるよ。連中は最終的にどこを目指してるんだ? この状況でどうやってTMCからずらかろうってわけなんだよ」
「さあ。港か空港か。いずれにせよどこか外に繋がっている場所に向かうはずだ」
呉が言うのに東雲がベリアからの情報を睨む。
「大井統合安全保障の
「大井統合安全保障には切りかかるなよ、セイレム」
セイレムが笑うのに東雲がそう忠告した。
『東雲。TMCの空域にさらにドローンが飛来した。ステルス機だよ』
「またかよ。大井統合安全保障は?」
『無人戦闘機が
「大井統合安全保障は仕事しろよな」
東雲がベリアの言葉に愚痴る。
「おい、東雲。こっちにもサンドストーム・タクティカルの連中の情報をくれ」
「了解。そっちに転送する」
呉が頼むのに東雲がARデバイスから情報を転送。
「ふうむ。こっちにあるのは高速ぐらいだぞ」
「TMCの高速は凄いが海外には繋がってないぜ」
「知ってるよ」
東雲たちはまだサンドストーム・タクティカルの行く先を理解できぬまま、ただ逃げる彼らを追い続けていた。
……………………
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