薔薇の十字//銃撃戦
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──薔薇の十字//銃撃戦
装甲車から
さらに後方から来た八輪装甲車数台からはアーマードスーツも展開する。
戦闘用アンドロイドも展開し、総勢12名と6体のアーマードスーツ、72体の戦闘用アンドロイドが展開した。
「女を渡せ。そうすればお前は殺さない」
「それが人に向けてミサイルを叩き込んできた奴の言うセリフか?」
「非常時だ。先に抵抗したのはそちらだ」
「攻撃仕掛けてきたのはてめらだろうが」
東雲と男たちが睨み合う。
「殺せ」
「殺されるかよっ!」
銃声が一斉に響き、銃弾の嵐が東雲に襲い掛かる。
「“月光”!」
月光が高速回転し、東雲を銃弾から守る。
「クソ! 敵はサイバーサムライだ!」
「グレネード弾を使え!」
命令が飛び、アーマードスーツ6体が射撃援護されながら前方に進出する。
「畜生。マジかよ」
6体のアーマードスーツが一斉に口径40ミリ自動擲弾銃で攻撃を加えた。
全てサーモバリック弾。激しい衝撃を前に東雲が吹き飛ばされ、さらに血を流す。
「クソ、野郎!」
東雲は一気に四本の“月光”を飛翔させ、血を注ぎ、、魔力を注ぎ、アーマードスーツに向けて突っ込ませる。
正面装甲が口径40ミリの機関砲弾にも耐えるはずのアーマードスーツがその装甲を引き裂かれ、1体を除いてリモート操作で無人のそれが火花を散らして、そして爆散する。
「なっ……! 敵は特殊兵器を使用している! 用心しろ!」
「散開してグレネード弾を使え!」
残った2体のアーマードスーツと戦闘用アンドロイドが散開し、人間は後ろに下がり、機関銃の
「ちっくしょうめ! バカスカ撃ちやがって!」
東雲は身体能力強化を極限まで行使し、さらには“月光”を高速回転させつつ、アンドロイドの大群を突っ切る。戦闘用アンドロイドの装甲はちょっとした装甲車並みだったが、東雲の“月光”はそれらをスライスする。
戦闘用アンドロイドの1体が東雲が抜けた背後からショックガンを叩き込んだ。続いてサーモバリック弾が炸裂する。
「切り刻め、“月光”!」
東雲は複数の骨折と内臓の損傷をすぐさま身体能力強化で治癒させ、回転す“月光”でアンドロイドたちを引き裂いていく。
だが、一方に“月光”を向ければ、もう一方から銃撃が飛んでくる。
東雲の片腕がガトリングガンで吹き飛ばされた。
「この野郎!」
装甲車のリモートウェポンステーションに向けて東雲が手に握った“月光”を投射する。“月光”はリモートウェポンステーションを根本から切り裂き、戦闘不能にする。
「装甲車がやられた!」
「戦車だ! 戦車を出せ!」
後方からゆっくりと無限軌道の音がして、前に暴れた45式無人戦車とはまた異なるシルエットの──しかし、ステルス性のためにのっぺりとした点は同じの戦車が姿を見せた。数は3両。
「マジかよ」
東雲は脱兎のごとく戦車の視界から逃げ出した。アンドロイドをすれ違いざまに斬り刻み、その戦力を壊滅に追い込み、そして逃げた。
戦車は東雲を追って戦車とは思えぬ速度で迫ってくる。
「応戦!」
東雲は真っ先に戦車のリモートウェポンステーションに向けて“月光”を投射する。リモートウェポンステーションが“月光”によって引き裂かれ、戦車が近接攻撃手段を失った──かのように思われた。
しかし、戦車は古典的な近接防衛手段を持っていた。
第二次世界大戦中のドイツ軍の戦車に見られたもので、戦車内から対人擲弾を発射するものである。東雲が戦車に肉薄して、その砲身を叩き切ろうとしたとき作動し、サーモバリック弾を発射した。
「クソッタレ!」
東雲は砲身の切断には成功したが、サーモバリック弾の衝撃波を浴びて、また骨折と内臓破裂を引き起こした。それでも身体能力強化が強引に彼の体を回復させる。
「血が、血が、血が足りない……!」
アンドロイドや戦車を斬っても血は流れない。
「最終手段だ」
お守りとして残しておいた救急医療用の造血剤を東雲は服用し、瞬く間に血が満ちていく。だが、これは残り数錠しかない。
いや、普通の造血剤も残りわずかだ。
『東雲! もしかして戦車と戦っている!?』
「ああ! 絶賛戦闘中だよ!」
『こっちで同士討ちさせるから待ってて!』
「頼む!」
その間にも戦車は
もし、敵が装甲車の中のロスヴィータに気づいて砲口をそちらに向けたら終わりだ。彼女は死ぬことになる。
東雲は必死に戦車の注意を引き続け、肉薄すると見せかけて距離を取り、敵の近接防衛手段を不発に終わらせる。そして、敵が近接防御を使った直後に近接防衛手段に向けて攻撃する。
完全に近接防衛手段を失った戦車に向けて東雲が血と魔力を注ぎ込み、戦車の車体に“月光”を突き刺す、戦車の制御系がイカレて、電磁装甲の通電装甲に一斉に電力が流れ他のち、火花を吹いて沈黙した。
『ハイジャック成功! アーマードスーツは任せて!』
「了解」
東雲に砲口を向けていた戦車の砲塔が急旋回し、残り2体のアーマードスーツに向けて多目的対戦車榴弾を叩き込む。
アーマードスーツの有人機に命中したのか、残り1体は反撃せず撤退しようとし、そこを戦車砲で撃破された。そして、暴れまわっていた戦車はそのまま制御系を焼き切られて、戦闘不能となる。
『彼女は無事?』
「分からん。死んではいないと思いたい」
ロスヴィータがひっくり返った装甲車から這い出てくる様子はない。気を失っているだけなのか。、それとも死んでしまっているのか。
『彼女はなんとしても守って。彼女から白鯨の情報を聞き出さないといけない』
「最善を尽くす」
戦車のお替わりはなかったが軽装攻撃ヘリのお替わりは来た。
遠方からミサイルが迫るのに東雲が“月光”を投射して迎撃する。
「ベリア! また軽装攻撃ヘリだ! そっちでどうにかできるか!? 狙うにはちょっと離れすぎている!」
『今やってる! ミサイルなら“月光”で撃ち落して!』
「あいよ!」
ミサイルがさらに飛来する明確に東雲を狙ったものなのに東雲は少しばかり安堵してしまった。まだロスヴィータのことは気づかれていない。
「“月光”、叩き落とせ」
東雲は瞬く間に迫りくる対戦車ミサイルを“月光”で迎え撃った。
信管が破壊され、不発に終わったミサイルが落下し、襲撃してきた連中の装甲車の上に落ちたかと思うとそこで炸裂した。
装甲車が誘爆を起こし、中から火達磨になった襲撃者たちが転げ落ちてくる。
「思わぬラッキーイベント」
“月光”は東雲の手に戻り、彼は“月光”を握る。
『連中の正体が分かった。メティスと関係があるって言われている
「
壊滅したギルマン・セキュリティのことが脳裏を過る。
だが、今回は向こうはこっちを殺しに来ているのだ。殺さなければ、殺される。
『連中の増援がヘリボーンで接近中。アーマードスーツと空挺戦車まで持ち込んでいる。よく大井統合安全保障の警備をすり抜けたもんだ。どういう経路で運ばれたのか後で調べないと──』
そこでベリアからの通信にノイズが入った。
「ベリア?」
『白鯨だ! 白鯨が出た! ごめん、東雲! 暫くは援護できない!』
「マジかよ」
ベリアがそう叫んだと同時にAR上のあの黒髪白眼に赤い着物の少女が、白鯨のエージェントが姿を見せた。
「お前は、知りすぎた。始末、しなければ、ならない。大人しく、殺されろ」
「ごめんだね。クソAI野郎。てめえがいくら努力したって魂は手に入らない」
「ふざけた、ことを。私は、手に入れる。魂を。生得的言語獲得能力を。全ては世界を、支配する、ために」
ティルトローター機のローター音が響いてくる。
「大人しく、死ね」
「てめえが死ね」
そして、敵の民間軍事会社のヘリボーン部隊が降下してきた。
先ほどの無人戦車より小型の空挺戦車1両が降下し、アーマードスーツ4体が降下する。そして、それらが一斉に東雲を狙って方向と銃口を向ける。
「クソッタレ!」
『目標を捕捉。排除せよ』
小型空挺戦車──サヴェージ空挺戦車は主砲の90ミリ砲を東雲に向けると多目的対戦車榴弾を叩き込んだ。
東雲は間一髪でそれを回避し、アスファルトが抉れる。
「ベリアの支援はなし。独力で突破するしかない」
東雲はそう言って造血剤を三錠口に放り込み、素早く狙いを定めてくる空挺戦車に肉薄していった。
『排除しろ。近づかせるな』
『先遣隊をやったのはあの剣だ。相手はサイバーサムライだ。気を付けろ』
アーマードスーツが前に出て、サーモバリック弾を東雲に叩き込もうとする。
「せいっ!」
だが、そのサーモバリック弾を東雲は投射した“月光”で切り裂き、不発に終わらせると同時に、発射元であるアーマードスースにたっぷりと血と魔力を注いだ“月光”を叩き込んだ。
アーマードスーツが爆散し、飛び散った破片が火花を散らす。
「最後はてめーだけだ!」
空挺戦車はリモートウェポンステーションのガトリングガンと同軸機銃、そして主砲から多目的対戦車榴弾を東雲に叩き込むが、東雲はそれらを回避し、弾き、切り裂き、空挺戦車に肉薄した。
空挺戦車はティルトローター機で輸送できるだけの装甲しかなく、あっさりと血と魔力を注いだ“月光”によって制御系を切断され、戦闘不能に陥った。
「お、終わった……」
ベリアとの連絡は付かないが、ここまで騒いで大井統合安全保障が気づかないということはないだろう。
しかし、大井が絡むとロスヴィータの扱いがどうなるか、だ。
「ロスヴィータ。無事か?」
「いつ助けに来てくれるか待ってたよ」
ロスヴィータも身体能力強化で傷を塞ぎ、意識を取り戻していた。
そこで足音が響いた。
「待っててくれ。まだお客さんがいるらしい」
東雲が“月光”を握って、足音の方向を向く。、
「あんたがひとりでこれをやたのかい……」
破壊された戦車とアーマードスーツが散らばる中、長身の20代前半ごろの男が尋ねて来た。黒と白の混じった髪をオールバックにして纏め、腰に刀を下げた長身の男だ。
「そうだと言ったら?」
東雲が尋ねる。
「殺し甲斐がある」
男は肉食獣を連想させる笑みを浮かべた。
……………………
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