PMSC
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──PMSC
PMSC──民間軍事会社。
これのことは東雲も全く知らないわけではなかった。
東雲が異世界に召喚される前に起きていたイラク戦争では
だが、民間軍事会社と日本は無関係だったはずだ。
いや、東雲が知らなかっただけで海外では民間軍事会社と日本政府や企業が契約していることがあったのかもしれない。
しかし、TMCという首都圏一帯の警察業務が街のお巡りさんから民間軍事会社に変わっているのはどう考えたっておかしい。
そう、大井統合安全保障は民間軍事会社だ。
正確には太平洋保安公司という台湾企業から派生した大井の親衛隊。
TMCはある意味では完全に大井の縄張りだと言える。何かあれば警察ではなく、大井統合安全保障が駆けつけるのだ。
それも自動小銃、機関銃、散弾銃は当たり前で攻撃ヘリやアーマードスーツとかいう物騒なものまで装備している。犯人は蜂の巣で済めば御の字だ。
という情報を話してくれたのが、今回の足を担当する平田・H・鈴だった。
30歳前後の年齢の男で仕事中は電子ドラッグをキメてないと運転できないというので、電子ドラッグをやらせていた。
よりによってジャンキーを脱走の際に必要になる足にするとはと、東雲は少しばかりジェーン・ドウを呪った。
「ねえ、電子ドラッグってどんな感じなの……」
「そうだな。脳を直接刺激してくれるんだ。BCIの
「うえ……」
死人の体験を疑似体験してハイになる。病気だ。相当な病気だ。
「それよりもよう。何を
「知る必要はない」
「ヤバイブツなのか?」
「知る必要はない」
ちぇっ。俺たちチームじゃねーのかよと平田が愚痴る。
こいつは自分が
下手に関わって情を持つと碌なことにならない。
ただの
「
「もうすぐだ」
敵の警備に当たっている民間軍事会社の指揮官の
それからアトランティス・ランドシステムズが製品を収める場所についても情報はあるが、そこでは仕掛けない。敵の拠点でドンパチやるのは流石に無謀だ。
アトランティスは
護送車両を東雲たちのような非合法傭兵が襲えば射殺しても何の罪にも問われないし、裁判が行われることすらない。
もっとも、企業のブランドイメージを保ちたければそこまで無茶な行動には出ないだろうが。だが、護送車両を襲えば間違いなく射殺される。文句は言えない。
大井統合安全保障も同じで、連中は撃ってから質問するんだと平田が言っていた。
この薄暗闇にもだいぶ慣れたと思ったが、やはり過去の日本と変わりすぎていて、動揺することが多い。
まあ、何はともあれ、今は
保管場所を襲撃するのが無謀なら、護送車両を襲撃すればいい。
敵は確かに手堅く、1個中隊を警備に当てているが“たかが1個中隊”だ。
1個中隊──300名程度。銃火器でフル武装していると考えても、奇襲さえ成功すればどうとでもなる。伊達に東雲も修羅場を潜っていない。
召喚された異世界では銃弾と同じ速度で放たれる矢や攻撃魔法を相手にして来たのだ。それも3000名や6000名の単位で。今さら1個中隊など。
だが、不安がないわけではない。
異世界の技術は明らかに劣っていた。この世界と比べるまでもなく。
そんな状態で“ローテク野郎”である東雲は自分がどこまでやれるかを考えていた。
これはそれを調べる上での試金石になるだろう。
「ベリア。車両は?」
「予定通り。ここに向かってきている」
東雲たちは橋を待ち伏せ地点に選んだ。
人工的に作られた用水路。その上に架かる橋の上に東雲は立ち、ベリアと平田は橋の下に車──
平田の車はシンプルで小型。だが、スピードは出ると自慢していた。
「車両、接近中。間もなく」
「派手にかまそう」
東雲は“月光”を取り出す。
“月光”は夜の暗闇の中で青緑色に輝いた。
「来た──」
「さあ、行くぞ」
東雲が一斉に“月光”を展開させる。
そして、展開した「新月」「三日月」「上弦」「十三夜」「満月」「十六夜」「下弦」「月光」が用水路を流れる薬品の蒸気の中でぼんやりと輝き、アトランティス・ランドシステムズの車列に襲い掛かる。
“月光”の刃が車両のフロントガラスを貫いて、前部座席に座っていた民間軍事会社──ハンター・インターナショナルの
慌てて降車したコントラクターたちが戦闘態勢を整える前に“月光”の刃が踊る。
50名前後の兵士が皆殺しになった段階で、東雲は“月光”を集合させ、格納する。ただ、一本の魔剣“月光”を持った状態で東雲は駆け抜ける。
後方から四輪駆動車に重機関銃をマウントしたテクニカルと兵士たちを乗せた車両が雪崩れ込んでくる。
東雲は“月光”を握り締め、突貫した。
「畜生! 相手はサイバーサムライだぞ!」
「殺せ!」
重機関銃の射手が首を刎ね飛ばされた。運転席の男が銃を取り出そうとするが、その前に東雲が頭を真っ二つに割った。
「────!」
外国人のコントラクターが英語で叫んだ。F言葉。聞き流して斬り殺す。
銃弾がバラまれるのに東雲は回転してそれを避ける。
そして、再び七本の刃を展開して高速回転させながら銃弾を防ぎ、その隙にコントラクターたちに肉薄する。七本の刃のうち二本が踊るように回転し、コントラクターたちに襲い掛かる。
胸を貫かれ、腹部の急所を貫かれ、コントラクターたちが倒れる。
東雲は銃弾を防ぎ、回避しつつ、次々にコントラクターたちに肉薄しては首を刎ね飛ばし、鮮血を舞い散らせる。撥水加工のジャケットに血が滴り落ちていく。
再びテクニカルのお替わり。
銃弾が撒き散らされる中を駆け抜け、射手の首を刎ね飛ばし、運転手の首も刎ね飛ばす。銃弾並みに加速する東雲が相手では、当てることは難しい。
コントラクターたちの銃口が狙いを付けたときには既にそこに東雲はおらず、すぐ目の前で“月光”を振りかざしているのだ。
「100」
100名のコントラクターが死んだ。護送対象の積み荷を守ろうと、残りのコントラクターたちが東雲に銃口を向けてくる。
「残り200」
東雲が加速し、一瞬で10名近いコントラクターの首を刎ね飛ばした。
『こちらコブラチーム! こちらコブラチーム!
死んだコントラクターのインカムから流れていた音声が途切れる。
声を発していたコントラクターは既に死体に変わっている。
東雲は“月光”とジャケットからぽとぽとと血を滴らせながら、徐々に後ろに下がるコントラクターたちに迫る。
「200」
東雲がカウントする。
「残り100」
東雲が刃を無造作に構える。
「撃てえっ!」
残ったコントラクターたちが一斉に発砲する。
彼らもこの
東雲は目にも留まらぬ速度で駆け抜け、コントラクターたちの首を叩き切る。心臓を貫く。肝臓を貫く。腎臓を貫く。人体の急所を的確に狙っていく。
コントラクターたちは狙いが定められず、挙句にはフレンドリーファイアを起こす。
「280」
東雲がカウントする。
「残り20、か」
……………………
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