第十二、三話 彼女の教室で。(改訂、読み易いです)
ーー卒爾だった。
新島の肩を、激しく彼女が掴んだのは。
その際、椅子が倒れた音により、教室内の視線が釘付けになる。
圭太も、この異様な事態に絶句していた。
唯単に、肩を掴むだけ、というのならーー強さにもよるがーー大丈夫だ。
椅子が倒れたのも、偶々当たってしまったと考えられる。
しかし、それが「異様」なのは。
貼り付けたような笑いを浮かべながら、彼女が新島の肩をーー其れも、食い込む位にーー強く、掴んでいた事だ。
そして、何を言っているのかは分からないものの、ぶつぶつと何かを呟き続けている。
対する新島は恐怖に支配され、激しく痛む肩を震わせながら、何度も首を振っていた。
しかし、こんな事を見せられ、身体が動かない圭太ではない。
走り出し、机を飛び避け彼女の元へ。
「・・・・・・っ、何やってんだよっ!」
そして、急いでその手を払い除けた。
途端膝から崩れ落ちる新島とその友達。
新島は眼を瞬かせ乍ら、俯いている。
しかし、友達の方はーーその底気味悪い笑顔を貼り付けたままであった。
まるで、人形の様に。
(何なんだ、こいつは)
思わず、数歩後退る。
「た、田中くん……」
その時、新島がか細い声で少年に言った。
「あっ、だ、大丈夫?!」
その声に気づいた圭太は、急いで彼女の肩を支える。
初めて持った彼女の身体は、とても華奢で、信じられないくらい、柔らかかった。
うわぁ、と思わず呻きそうになるのを必死に止める圭太だろうか。
(いやいや! 雑念は振り払って、今は助けるのみ!)
少年は精神力を振り絞り、彼女を連れて教室から出ていってしまった。
ーー心の中に、それでも消えない「違和感」を抱きながら。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
新島の肩を支え乍ら、廊下を進む圭太。
決して力が有るとは言えない彼だが、彼女の迚も軽い身体のお陰で無理なく歩む事が出来ている。
「だ、大丈夫? 新島さん」
彼女の状態が心配になった彼は、声をかけた。
それに、彼女が答える。
「うん…大丈夫。さっきは、助けてくれてありがとう」
声に芯が通っている辺り、相当辛い訳では無い様だ。
少し安心する圭太。
「そんな…ほら、昨日言ったよね、できる限り、力になるって」
そう言って、少年は彼女に笑いかけた。
「っ……」
其れを見た彼女は、なんだか不思議なーー少し頬を赤くして、喜んだ様な、驚いた様なーー表情をした。
♢♢♢♢♢♢♢♢
無事、保健室に到着した圭太。
しかし、先生は不在の様で、誰もいない。
取り敢えず、彼女をベッドに寝かせる。
……やましい事はしない。
例え、そのソフトボールのような胸に目がいっても、
金属光沢のように光る、長い脚が目の前で伸びていても、
(……やましい事は、しないっ!!)
圭太は心の中で、血の涙を流しながら、そう固く誓った。
そして気持ちを振り切り、話す。
「ええと、取り敢えず、休む?」
「いいえ。ーー貴方に、話したい事があるから」
話したい事。
それは恐らく、先程の事件だろう。
「さっきのこと、だよね。……話してくれる?」
「うん。
ーー最初は、普通だったんだよ。
いつもと同じ道で
詩……あの友達の名だろう、と圭太は考える。
「校門を通った時に、急に詩が「今日は教室で話そう」って言い出して…そのまま校舎に入ったの」
「うん」
「それで、クラスに着いて、自分の席で話そうって思ったら、今度は「少し聞かれたく無い事があるから」人のいない隅で話そう、と」
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お読み下さり、ありがとうございました。
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