第十四話 彼女の話、その一

新島の肩を支え乍ら、廊下を進む圭太。


決して力が有るとは言えない彼だが、彼女の迚も軽い身体のお陰で無理なく歩む事が出来ている。


「だ、大丈夫? 新島さん」


彼女の状態が心配になった彼は、声をかけた。


それに、彼女が答える。


「うん…大丈夫。さっきは、助けてくれてありがとう」


声に芯が通っている辺り、相当辛い訳では無い様だ。


少し安心する圭太。


「そんな…ほら、昨日言ったよね、


そう言って、少年は彼女に笑いかけた。


「っ……」


其れを見た彼女は、なんだか不思議なーー少し頬を赤くして、喜んだ様な、驚いた様なーー表情をした。


♢♢♢♢♢♢♢♢


無事、保健室に到着した圭太。


しかし、先生は不在の様で、誰もいない。


取り敢えず、彼女をベッドに寝かせる。


……やましい事はしない。


例え、そのソフトボールのような胸に目がいっても、


金属光沢のように光る、長い脚が目の前で伸びていても、


(……やましい事は、しないっ!!)


圭太は心の中で、血の涙を流しながら、そう固く誓った。


そして気持ちを振り切り、話す。


「ええと、取り敢えず、休む?」


「いいえ。ーー貴方に、話したい事があるから」


話したい事。

それは恐らく、先程の事件だろう。


「さっきのこと、だよね。……話してくれる?」


「うん。


ーー最初は、普通だったんだよ。

いつもと同じ道でうたと会って、話しながら学校に行って」


詩……あの友達の名だろう、と圭太は考える。


「校門を通った時に、急に詩が「今日は教室で話そう」って言い出して…そのまま校舎に入ったの」


「うん」


「それで、クラスに着いて、自分の席で話そうって思ったら、今度は「少し聞かれたく無い事があるから」人のいない隅で話そう、と」



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