第十三話 彼女、救出

ーー卒爾だった。

新島の肩を、激しく彼女が掴んだのは。


その際、椅子が倒れた音により、教室内の視線が釘付けになる。


圭太も、この異様な事態に絶句していた。


唯単に、肩を掴むだけ、というのならーー強さにもよるがーー大丈夫だ。

椅子が倒れたのも、偶々当たってしまったと考えられる。


しかし、それが「異様」なのは。



そして、何を言っているのかは分からないものの、ぶつぶつと何かを呟き続けている。


対する新島は恐怖に支配され、激しく痛む肩を震わせながら、何度も首を振っていた。


しかし、こんな事を見せられ、身体が動かない圭太ではない。


走り出し、机を飛び避け彼女の元へ。


「・・・・・・っ、何やってんだよっ!」


そして、急いでその手を払い除けた。


途端膝から崩れ落ちる新島とその友達。


新島は眼を瞬かせ乍ら、俯いている。


しかし、友達の方はーーその底気味悪い笑顔を貼り付けたままであった。


まるで、


(何なんだ、こいつは)


思わず、数歩後退る。



「た、田中くん……」


その時、新島がか細い声で少年に言った。


「あっ、だ、大丈夫?!」


その声に気づいた圭太は、急いで彼女の肩を支える。


初めて持った彼女の身体は、とても華奢で、信じられないくらい、柔らかかった。


うわぁ、と思わず呻きそうになるのを必死に止める圭太だろうか。


(いやいや! 雑念は振り払って、今は助けるのみ!)


少年は精神力を振り絞り、彼女を連れて教室から出ていってしまった。


ーー心の中に、それでも消えない「違和感」を抱きながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る