第1話 プロローグ。ゲームの世界にようこそ

「あれっ?ここは?」


 わたしの親友、天音あまねカナは大きな目をぱちくりとさせて、あたりをキョロキョロと見渡していました。地面には、ふわりとした雑草ざっそうしげり、風もないのにそよそよと、ゆれています。


 四角い太陽が真上にのぼっています。

「カナちゃん……ここ、ゲームの世界じゃない」

「ユリちゃん、絶対そうだよ」


 わたし、小峰こみねユリは、ちょっぴり自信がありました。カクカクとした風景ふうけい。パパが言っていた「てくすちゃー」ってやつだ。

 てくすちゃーとは、ゲームの物体ぶったい表現方法ひょうげんほうほうだと、パパが教えてくれたのを思い出しました。


「すごい!わたしたち、ゲームをしてたらホントにゲームの世界に来ちゃったんだ」


 カナちゃんは興奮こうふんして言いました。しかし、わたしは冷静れいせいになってかんがえます。もし、これが本当に私たちの知っているゲームの世界だったら、夜になったらてきが出てくるかもしれないからです。それに……


「どうやったら、この世界から出られるのだろう?」


 ちょっぴり、わたしは不安ふあんになってきました。


大丈夫だいじょうぶだよ。どうにかなるって」


 そういって、カナちゃんはまわりを見渡みわたしながら、右へ左へとズンズンと進んでいきます。ところどころにゲームの「てくすちゃー」の木々が生えています。


 その木は、四角い木のみきに、四角にまとまった木の葉がついています。


「まっ、待ってよ~、カナちゃん」

「見て!ユリちゃん」

「えッ!これは」



「「宝箱たからばこだ!!」」


 そこにはふるびた宝箱が落ちていました。色はあせ、簡素かんそ装飾そうしょくながらも黄色と赤に金色のアクセントをした立派りっぱな宝箱。


 やっぱり、ゲームの世界にきてしまったんだ。そうすると、このチェストには武器ぶきやアイテムが入っているハズ。四角い木のみきの横で、ちょこんとおいてあるチェストを、いのるようにながめます。


 ——素敵すてきなアイテムが入っていますように


「ユリちゃん。開けてくれない?」

「ええ~、こわいヨ」

「わたしもコワイ」


 いつも活発かっぱつなカナちゃんだが不安そうな顔をしています。わたしはゴクリとツバをみ、チェストに手をばしました。心臓しんぞうがバクバクとはずみます。


 キィーというかわいたおとが、もりの中にひびきました。


「ユリちゃん。なにが入ってた?」


 中にはみどり宝石ほうせきが一つとほんのようなかみたば。わたしはチェストの中にあった一冊いっさつの本をり出しました。武器やアイテムがなかったのが残念ざんねんです。

 

「宝石と……これは本かな?」

「たぶん……武器はいってなかったね」


 ためいきをつく私。


「まっ、いいじゃん。ねぇ、読んでみようよ」


 カナちゃんは私とはぎゃくに、ホッとしたのか、また元気よく話し出します。わたしはカナちゃんの言われるがまま、本を音読しました。


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