第5話 両親

 父 板倉一豊 昭和58年7月10日生まれ 会社員 勤務先〇〇工業

 母 板倉真由 昭和60年3月3日生まれ パート 勤務先〇〇スーパー


 倉崎先生は、すぐに父親の勤務先の〇〇工業に電話してみた。カード会社ですが、在籍確認のお電話ですと嘘をついた。そしたら、父親は会社を辞めていた。


「え、いつ頃おやめになったんですか?」

「2年くらい前にはやめてます」

「今はどこで働いているかご存知ですか?」

「知りませんけど、実家に帰ったって聞いてます」

「実家ってどちらですか?」

「長野県の田舎です」

 あ、あの住所の所だ。

「連絡先をご存知ありませんか?」

「さあ・・・」

 さすがにそこまでは教えてもらえなかった。


 お父さんと一緒に長野県の実家に帰ったんだ。

 田舎過ぎて学校に通わせられなかったんだ。警察だって同じ情報を握っているはずだ。事件性はないのではないか。


「退職の理由って何だったんですか?」

「両親の介護だったと思うけど。本当にカード会社の人ですか?」

「はい・・・申し込みがあったのですが、情報が古いみたいなので・・・色々教えていただいてありがとうございました」

 倉崎先生はさすがにバレたと思い、慌てて電話を切った。


 倉崎先生は、これで調査を終えようかと思ったけど、その秘境に暮らす家族を尋ねてみたいと思った。以前から、TVでやってる『ポツンと一軒家』を見るのも好きだった。いきなり尋ねて行って、クマと間違って打たれたら困るから、行く前にハガキを出しておいた。電話番号を書いておいたけど、電話はかかってこなかった。


 倉崎先生は数日後の三連休に長野県の家を訪ねることにした。誘う人もいないので、一人で行くことに決めた。

「本当に行くんですか?」常田先生は呆れたように言った。

「はい。お父さんと三人で住んでるみたいなので、元気な顔を確認出来たらいいんですけど・・・それにしても、何で学校に行かせないのかわかりませんね。いくら不登校だからと言っても・・・行かせる努力はするべきだと思うんですけど」

「親が行かせないんじゃないの?宗教とかに入ってる人は教育が悪だと思ってる場合もあるから」

「就学義務違反ですよね?」

「過去に書類送検されたケースもあるけど、親と引き離して学校に通わせるっていうのはできないんじゃないかな」

「でも、そんな田舎に住んでたら、将来困りますよね」

 倉崎先生は私がその子たちを引き取ろうかとまで考えていた。久しぶりに、B君に会ったら何て言おうか。先生はAちゃんとB君のために、最近話題になっている本を買ってお土産にすることにした。


 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る