第一章幕間
決して届く事のない本音達の墓場
第44話 貴方はいつ見ても美しい―――アルフ・カーシェ
カルストゥーラ様は、覚えておいでだろうか。
私は以前にカルストゥーラ様に命を救って頂いた事がある。以前住んでいた森の近くを荷馬車で通っている際に山賊に襲われ、「死にたいなら残れば良い。そうでなければさっさと消えろ。……今は、誰とも会いたくないんだ」と仰った彼の方を。
酷く寂しそうな顔をされ、感情も何もかもを失った死んだ目をされたあの方にお礼だけ言って馬車を走らせ、逃げてしまった。
そして、時々カルストゥーラ様の情報を追いながらもこの元王都に辿り着いた。
あの頃は名前も分からず、私もあまり商売が安定していなかった。だが、この元王都で商業ギルドのマスターとなった私は以前にもましてカルストゥーラ様の情報収集をしていた。
あの時の恩を返したい。あの瞳を、あの心を満たして差し上げたい。
私がスラムで生まれた事も相まって、あの目をしながら、あれだけ傷付いていながら助けて下さったあの方を満たして差し上げたい。
だがある時、その願いは予期せぬ形で叶った。
カルストゥーラ様がルイスと言う悪魔と共に我がギルドまで赴いて下さった。
嗚呼、カルストゥーラ様。貴方様の従順な下僕となった今言ったとしても信じて頂けないかもしれません。しかし、私は貴方の事を心から愛しております。貴方の事を心から信じております。
こんな魔法で縛らなくたって、私は貴方に着いていくのに。
ですが貴方はきっともう人を簡単に信用出来る程他人に期待出来ないのでしょう。
貴方が安心出来るのであれば私は一生貴方の奴隷でも構いません。一生貴方の下僕でも構いません。
貴方が心の底から信用出来る、愛すべき人を見つけるその日まで私は貴方に貢ぎを続けましょう。あの時の贖罪と、以前よりは少し幸せそうな、愉しそうなお顔をして下さっている貴方様の為に。
貴方はいつ見ても美しい。
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