第54話姉呼び(別題、新しい妹分ゲットだぜぇ!)
眞子視点
「はいこれお願いします」
「おう」
綺麗に洗ったお皿を友人君に渡す。彼は渡された皿の水分を綺麗に拭き取り食器棚に仕舞っていく。閑名家のお皿は高級そうに見えて洗うのにも少し慎重になってしまう。
私達は夕食の後片付けをしている。
女性陣が嫉妬するほどの周平君の料理とお高めのオードブルに舌鼓を打っていると湊ちゃんが間違って秋夜さんが飲んでいたお酒を飲んでしまった。
一口飲んだだけで顔を真っ赤にした湊ちゃんは周平君に甘え始める。いつも湊ちゃんは甘えているけどお酒でタガが外れているみたいで飼い主にでれでれの猫みたいだった。
これが本気で甘える湊ちゃんなんだといいもの見れてよかったと思う。
さすがに記録は残さないでおく。酔いが覚めたときに湊ちゃんが見たら羞恥で転げまわりそうだから、でも秋夜さんはスマホで動画撮影していた。やはり三人の姉貴分な人だと思う。
周平君は湊ちゃんに絡まれているので私と友人君に後片付けを頼んできた。私も片付けるつもりだったので素直に引き受ける。
私が洗い、場所を知っている友人君が拭いてしまっていくことになった。
「美味しい料理をありがとうございました」
「あれは周平と注文した姉貴に言ってくれ」
片付けの途中だけど友人君にお礼を言うと自分じゃないと断られた。
「では友人君が自宅に招いてくれたので美味しい料理いただけたのでありがとうございます」
むうと困る友人君。人のお礼を素直に受け入れないから追い詰められるのに。
「昼間の水をくれなかったことといい、眞子ちゃんは図太くなったなぁ」
もうっ女性に図太いとはなんですか。
「三人のおかげで大人しくしてると被害にあうだけとわかりましたから、特にある人には特に教えられましたかね!」
重要なので二度言いましたよ。本人は周平と湊ちゃんのどっちだ?と完全に的外れになってますが。なら今後の対応はもっと厳しめでいきましょう。直接伝えるのは私が負けたように感じるので。
「座敷の方が騒がしいな」
友人君がさっきまでいたお座敷の方を見た。
私も耳を澄ますと、馬鹿野郎!俺は彼氏がいるんだ!うっそだぁー、どこの誰だよ。動物園にいる?ぶっ殺すっ!と不穏な言葉が聞こえてくる。
秋夜さんに彼氏がいるのは少し驚きだけど動物園はいけないよ周平君。強さで言えば確かに動物園にいそうだけど。
「周平君は大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫、姉貴はたまにしかへまはしないよ」
たまにはへまするんだ・・・。
そう思っているとずかずかと男らしい足音が台所に向かってきた。
「おう片づけは済んだか?」
ドアを開けて入って来たのは秋夜さん。
そしてその片腕には眠っている湊ちゃんが抱きかかえられていた。
え?人ってあんなに軽々と片手で抱きかかえられるの?しかも女の人が、え?
「もう少しだよ。周平はどうなった」
「優先順位の低い整体をしてやったら悶絶してな。あとで飲みもんでも持って行ってやれ」
「りょーかい」
友人君は湊ちゃんのことをスルーして話している。これは私がおかしいのかな、それとも閑名家の人がおかしいのかな・・・絶対後の方だ。うん私は間違ってない。
「湊を休ませるが眞子も連れて行くぞ」
「いいよ。後もう少ししか残ってないし」
「え、でも・・・」
秋夜さんは私を連れて行こうとしているけど。中途半端に残すのは気が引けてしまう。
「しょうがなかったとはいえ初日にお客さんに片づけさせるのも悪いんだ。すなおに姉貴についていってくれ」
そういって友人君は洗い物とスポンジを私から取り上げた。どうしてこの気遣いが私に絡んできた時にできなかったのだろうか・・・。
「おい眞子行くぞ」
「は、はい!」
手を拭いてから催促する秋夜さんについていった。
「ぬみゅ~」
変な声を出して湊ちゃんはベッドに降ろされた。優しく降ろされる光景は絵になるのだけどどちらとも女性なのがう~んと感じる。
「ほら眞子もこっちに来い。疲れているだろうから湊の横で寝とけ。二、三時間したら起こして風呂入るからな」
秋夜さんは湊ちゃんの隣に横になり、ドア前にいる私を手招きする。いや、秋夜さんは私達を侍らせてハーレムでも作るのだろうか。食事の時も私達は侍ってたけど。彼氏がいるなら何もしないよね。
「え、私は何もしてないので疲れは・・・」
「なれない他人の家に来たんだ。自分でも気づかないうちに疲労しているもんさ。いいから年長者の言うことは聞いてとけ」
秋夜さんは男子達とは違って同性の私には優しく接してくれる。夕食前も口調は悪いけど湊ちゃんの周平君への愚痴や私が友人君に受けた被害の一部を否定せずに聞いてくれた。友人君は後で罰を受けることになったけど。
「それじゃあ失礼します」
三人乗ってもまだ広さのあるベッドは高級なのだろうか凄く優しく包み込んでくれる。
湊ちゃんの隣に横になると急に眠気を感じ始めた。
「ほら俺の言ったとおりだろ」
「はいそうですね秋夜さん」
ウトウトと瞼が重たくなっていく。どうやら秋夜さん言う通り疲労していたみたいだ。
「最初から思っていたがそのさん付けはなんだ。湊達の親友なら俺の妹分もおんなじだ。姉さんと呼べ姉さんと」
それは少し恥ずかしい。初日お姉さん呼びなんて。
湊ちゃん越しに頭を撫でられる。親以外では初めてだ。凄く気持ちがいい。これがお姉ちゃんというものだろうか。
「よしよし眞子はあいつら三人に振り回されるんだ。お姉ちゃんになんでも相談しろよ」
「うんわかった秋夜ねえさ・・・ん」
眠りに落ちる寸前、私は秋夜姉さんと呼び、妹分ゲットだぜぇと聞こえたような気がした。
ーーーーーーー
秋夜「妹は何人いてもいい」
湊「ニャ~ン」
眞子「ク、クゥ~ン」(照)
男ズ「「俺たちはっ!?」」
秋夜「0.5人に減ってくれねぇかな」
男ズ「一人でもねぇ!」
秋夜は可愛い女の子が好きです。頑張っている子は特に好きです。
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