第11話友人は変人、担任はマスコット




周平視点


「ぽんぽんが痛いよ~」


 友人が俺達の隣で腹部をさすりながら呻いている。

 

 あの後、友人を優しく(腹に打ち下ろし気味のフック)起こしてやった。のたうち回るかと思ったが、呻いて起きただけだったので恨みも込めてもう一発いれてやる。

 友人は予想以上に丈夫だ


「自分一人で晒されとけばいいものを人の名前まで書いて道連れにしがやって」

「そうだよ。おかげで周平と手を離さなくちゃいけなかったんだよ。上半身裸になってお腹に負け犬って書いてうつぶせに寝てて」


 本当に大迷惑だった。カッとなって起こしてしまったが、おかげで俺が時東周平と周囲にバレてしまった。

 気絶していた奴に容赦ない拳を見舞えば、そりゃあバレるだろう。

 友人は馬鹿のくせに地味に頭を使ってくるな。


 そして湊、手が離れた事に不満を持っているようだが、友人に対して容赦がなさすぎる。仰向けにしてないと字が見えないだろ。

 え、誰かが助けて仰向けにした時に見えた方がビックリする?天才だな湊、いつか友人で実験しよう。


「カップルで俺を世間的に詰ませようとしてくる!特に嫁の方が容赦ねえな」


 馬鹿が騒ぐが先ほどの失神状態で高校での評価は変人に決まったんじゃないかな。


「なんであそこで馬鹿面晒して寝てたんだ馬鹿」

「たくさんの馬鹿ありがとうございます。いやー昨日さ周平を生贄にして帰った後、ゲームをしてたのよ」

「思い出した。お前のコントローラーをベタベタにしに行くから待っとけよ」

「なんで?」

「仲いいよね二人。嫉妬するな~」


 こらこら男同士に嫉妬してはいけませんよ湊。

先ほどからこちらをチラチラ見ていたおさげで眼鏡っこの女子が目を輝かせて、同志がいたっ!と思っているじゃないか。


「で、ゲームをして何?」

「あまりにも難しくてな、そのまま二徹に突入したわけ」

「お前、俺達が高校生活まだ二日目な事覚えてる?」

「普通あり得ないよね。周平の友達だからかな」


 馬鹿はやっぱり馬鹿だな。あと湊さん、俺もディスるの止めてくれませんか。その言い方だと俺の友達全員、変人になっちゃう。


「朝五時ぐらいだったかな。奇声とだべだべがうるせえと姉貴が部屋に突入してきてそのまま家から叩きだされた」


 湊と二人であーと納得した。友人の姉は俺達も知り合いで、姉御と呼びたくなるぐらい男前な格好いい女性だ。

 俺達二人には厳しくも優しいお姉さんなのだが、こと弟の友人に対しては容赦がない。モザイクがかかってほしい状態の友人を見たときに、湊と俺は逆らうのはよそうと確認しあったものだ。


「まあ、俺も眠たかったからちょうどよかったんだけど、そのまま寝たら遅刻しそうだなと思って、二人が登校する道で寝てれば起こしてもらえると思ったわけ。紙に書いておけばわかるだろうし」

「馬鹿だ本物の馬鹿がいたよ湊・・・」

「泣いていいとおもうよ周平。私も友達がこんなに馬鹿だったら辛すぎる」


 俺と湊は身を寄せ合い馬鹿を見た。


 馬鹿はなぜか照れている。生態が本当に謎だ。


 そうこうしているうちに学校に着いた。


 校門前には二人の教師が立っていて生徒が登校してくるのを見張っている。


「あれ?梅ちゃん先生じゃん」


 友人が片方の女性教師を見ている。


「俺達のクラスの担任で名前は梅田富子。年齢は秘密の童顔な梅ちゃん先生。昨日のHRで自己紹介してただろう。覚えてないの?」

「お前、昨日の俺の状態で記憶することが出来ると思うのか」


 そうか担任の先生か、通り過ぎる生徒が梅ちゃん先生、梅ちゃん先生と挨拶している。梅ちゃん先生と呼ばないでと必死に否定しているのが愛らしい。たぶん慕われる先生だな。


「友人君・・・あれ大丈夫?」

「梅ちゃん先生は生徒第一のマスコットタイプだから、湊ちゃんのアレには入らないよ」


 ハイライトが消えた目で湊が友人に何か聞いている。アレってなんだろう。


「もう一人は私のクラスの担任だね。エリートだけが正しいと思っているクズ」


 舌打ちする湊。下品ですよ。


「なんであの教師、湊ちゃんの敵認定されているわけ?まだ二日目よ」

「わからん。あ、入学式の時に湊を止めようとしていた教師じゃないか」

「それでか、可哀そうに。どうか大人しくしとけよ、そうすれば湊ちゃんも攻撃してこないから」


 友人と小さな声で情報交換する。

 俺の彼女は猛獣ではないよ?


 ダークサイドに落ちた湊の手を引いて校門に向かう。

 挨拶するのは梅ちゃん先生のほうだ。大半の生徒が梅ちゃん先生側を通行している。

 梅ちゃん先生が慕われているのか、湊の担任が嫌われているのか、たぶん両方だろう。


「ちわー梅ちゃん先生」

「おはよう閑名くん。ちゃんと梅田と呼んでね」

「おはようございます。梅ちゃん先生」

「おはよう時東くん。君もちゃんと呼ぶこと」


 すごいな梅ちゃん先生、こちらの顔と名前が一致している。梅ちゃん先生と呼ばれるのは嫌なのか。

 さりげなく出たが友人のフルネームは閑名友人ヒマナトモヒトだ。覚えなくていい。


「おはようございます梅田先生」

「おはよピィッ!」


 湊が挨拶したら変な声が出たぞ梅ちゃん先生。

 入学式のせいで怖がられているのかな。


「お、おおおあひょうです」


 なにこの愛玩動物。

 湊も周囲の生徒もほんわかした顔になっている。癒し効果が抜群だ。


 登校途中なのでそのまま通り過ぎるの惜しいと思うがしょうがない。


「おい、止まれ時東周平」


 ほんわか気分で玄関に行こうとしたら、湊の担任に呼び止められた。


梅田富子・・・周平のクラス担任。童顔で愛らしいと生徒達から絶大な人気を誇る。受け持つ生徒の顔と名前を必死に覚えた。梅ちゃん先生を害した場合、大多数の生徒に敵認定される。学校のマスコットぶっちぎりの一位。


湊の担任・・・気持ち悪くなるから書きたくないの・・・(;・ω・)

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