チートな魔法特化イケメンと超巨大美少女に転生したので異世界で無双します

かびふーじ

第一章

一話 こうして異世界に旅立った。


「と言う訳で…… お前さん達は死んでしまった!」

「はぁ……」


 目の前の、いかにも某なろう小説に出てくる神様風なおじいさんの言葉に、某なろう小説の主人公と同じ返しをしている、オレの親友であるユウタ。

 この何もない真っ白な空間で、目の前のおじいさんと少し言葉を交わしただけで意気投合しあうユウタとおじいさんに、オレは少し離れた距離で成り行きを見守る。


 どうかお願いします…… この後のセリフが『ちょっとした手違いで、神雷を下界に――』の件じゃありませんように……


「ちょっとした手違いで、湯飲みを下界に落としてしまった。本当に申し訳ない」


 神雷じゃなかったか。

 それにしても、まさかの俺らの死因は湯飲みだったのか……?


「まさか落ちた先に、北の将軍様の核兵器発射ボタンがあるとは……」


 えぇ……

 まさかの核兵器の被爆だった……

 

「マジすか! 死因が神様の手違いで核兵器とか、これはレアですね!」


 神様おじいさんにユウタが興奮気味に言った。

 てか、レアって……

 確かに神様の手違いでノース朝鮮の核兵器で死ぬって、そんな作品は少ないけどさ。

 つまり、これで異世界に行って下さい的な流れになったら、オレは『神様の手違いで被爆した僕は――』的なナレーションを言う感じになるのか?

 シュール過ぎんだろ!


「所でユウタ君と…… そこのサクラ君! そうじゃった、名前はサクラ君じゃったな」


 神様はオレとユウタの名前を呼ぶ。

 てか、オレの名前を言いよどむって…… まあ、影が薄いのは理解していますよ。

 

 オレの内心を知ってか知らずか、神様風おじいさんは声を少し張り上げながら言う。


「君ら…… 異世界転生をやってはみないかえ? 剣と魔法のナーロッパしょうせつかになろうのヨーロッパの世界じゃ!」

「キター! ナーロッパ!」


 神様風おじいさんの言葉に、ユウタは興奮した様に喜びの声を上げている。

 まあオレも嬉しいけどね。

 剣と魔法のナーロッパ世界に転生が出来るなんて、こんなラッキーを逃す理由なんて無い。

 瞳をキラキラと輝かせるユウタに、神様風おじいさんは嬉しそうに言う。


「ほっほっほ! と言う訳で…… チート特典は何がええかな? なんでも言ってごらんよ!」


 神様風おじいさんの言葉に、ユウタは興奮した様に、直ぐに答える。


「魔法チートしたいです神様! 迫りくる悪い奴らを魔法でちぎっては投げちぎっては投げしたいです!」


 ユウタの言葉に神様風おじいさんは「ほっほっほ!」と笑っている。

 そういえば、ユウタの好きな転生物のなろう小説は魔法無双物ばっかりだったな。


「それは良いのう! わかった。任せときなさい! ワシが出来る限りの魔法チート特典を付けてやろうではないか!」

「ありがとうございます!」


 神様風おじいさんにユウタは興奮した様子で感謝を述べる。

 よかったね、ユウタよ。

 満足そうなユウタを暫し見た後、神様風おじいさんはオレを見た。


「お前さんは、どんなチート特典が良いかな?」


 神様風おじいさんは、オレに問いかける。

 そうだなぁ、何が良いか。

 オレが好きだった作品を思い浮かべる。

 ドラゴンに転生したり、スライムに転生したり、はたまた古代の最終兵器に転生とかもあったな……

 たぶん、オレは最強の種族っていうのが好きなのだろう。

 こう言っては自分でも趣味が悪いと思うが、オレは何も苦労せずに種族の立場から他者を見下せる立場になりたいのだと思う。

 だから、一言で言うなら、


「オレは最強の種族になって、何も苦労せずに最強でいたい」


 という最低な願望になるだろうな。

 オレの言葉にユウタは呆れた様子だ。


「やっぱりサクラは、良く言えば正直だよな。良く言えばな」

「うるせいやい」


 ユウタの言葉にオレは一言返す。

 まあ、そうだよな。

 どう考えても最低な願望なのは分かっているからな。 

 

「ほっほっほ…… ワシは正直なのは良い事じゃと思うぞ? 欲望は、お前たち地球人の原動力や創造力の源でもある!」


 神様風おじいさんは少し笑った後にそう言うと、オレを見る。


「お前さんや! 最強の種族で良いのじゃな?」

「……おう。楽が出来るなら最強の種族がいい」


 神様風おじいさんの問いかけに、オレは答えた。

 オレの返答に神様風おじいさんは暫し考えた後、頷く。


「わかった。最強の種族で、尚且つ楽が出来る様にしよう! ……ちょうど、事実上の最強種族の魂枠が一つ空いておるからなぁ」


 神様風おじいさんは、そう言うと一つ己に相槌をする。

 それにしても、事実上の最強種族かぁ…… 楽しみだぁ!

 

「では、転生させるぞ? これからお主らを眠らせて、魂を弄る。目が覚めたら準備が完了しているじゃろう」


 そういって、神様風おじいさんは何処からか取り出したのか分からないが、赤いボタンが付いたスイッチを取り出した。


「では、ぽちっとな!」


 神様風おじいさんが、そんな言葉と共にボタンを押すと、俺たちは突然の睡魔に襲われて眠りに落ちた。



●●



「うーん…… 知らない天井だ」


 目が覚めて真っ先に目に映ったのは、俺の知らない現代的なマンションの部屋の天井だった。

 ……そういや、俺はサクラと一緒に異世界に転生したんだったな。

 てっきり転生したら草原や森のど真ん中に転生すると思っていたんだが、マンションの一室のベッドで目が覚めるとは思わなかったよ。

 あの神様曰く、剣と魔法のヨーロッパ…… いや、ナーロッパ(なろうのヨーロッパ)世界に転生したらしいが、見た限り現代的な部屋や家具だ。


「それにしても、このベッドは寝心地いいな」


 空調の効いた涼しい部屋にフワフワの低反発ベッド、素晴らしく寝心地の良い環境だ。

 もうちょっと寝ていようか考えたが、転生したなら冒険をしたい。

 心惜しい気もするが、身体を起こす。

 

 転生の基本である神様からの手紙とか無いかな?

 辺りを見回すと、ベッド横に置かれたサイドテーブルを見つけた。

 サイドテーブルには洒落たテールランプと一つの封筒…… さっすが神様! 目覚めた場所の近くに手紙とは、転生物のテンプレをわかってらっしゃる!

 

 俺は、なろう系小説に精通している神様を内心で褒め称えながら、封筒を開けて中に入っていた手紙を取り出した。

 

『これを読んでいるという事は、ちゃんと異世界に転生できたと言う事じゃ。起きたらマンションの一室じゃったからって、心配する必要は無いぞ?』

「なるほど、ちゃんと異世界に転生が成功してるのね」


 どうやら異世界に転生できているらしく、俺はホッと安心したので手紙を読み進めた。


『まず、君たちが転生した種族について説明しようと思う』

「待ってました!」


 神様の手紙に書かれていた内容は驚く事ばかりだった。

 先ず、俺の転生した種族は精霊族と呼ばれる種族らしく、魔法を使う事に特化した種族だ。

 魔法は属性精霊に魔力を提供して、詠唱により魔法内容を伝えて、魔法の完成品を受け取って放つものらしいが、精霊族は種族自体が属性精霊と似たようなものらしいので、詠唱も受け取りもいらないらしい。

 つまり、魔法を自給自足できるって事。


 元々魔力保持量が高い種族らしいが、俺の場合はそれを更にチート特典で上乗せしているらしく、めちゃくちゃ高い魔力保持量があるらしい。

 更に、魔力回復は種族としては十数秒で全回復の所、俺は三秒だとか。


 つまり、俺のチートは精霊族+膨大な魔力保持量+全魔力回復時間が三秒という事だ。

 やべぇチートだ!


「なるほど、チートだなぁ! ……お次はサクラのチート能力か、何々?」


 サクラのチート能力は分かりやすい物を選んでいたっけ。

 確か「最強種族で、何も苦労せずに最強でいたい」だった筈。

 俺はサクラの最強種族について読み進める。

 読み進める内に、俺は乾いた笑い声を出してしまう。


「ハハハッ…… 確かに最強だな…… 確かに最強だけどさ……」


 俺はベッドのある部屋を出て、リビングに移動し、ベランダに出る。

 ベランダから見える景色、それは何もかもが巨大な一つのワンルーム。

 山の様に大きな…… いや、山を優に越える大きさのテールランプに、大陸の様な大きさの机。

 俺から見たら何もかもが巨大な、百万倍の大巨人の為の部屋が広がっていた。

 

 今オレが居るのは、巨大な机の上に置いてある、ドームに囲まれた町の中。

 そんな小さな町の外…… 遥か向こうに見える、ベッドで眠る超巨大な和風美少女。

 アレがサクラだとは誰が信じるのか。

 サクラは確かに最強の存在に転生した様だ。

 女神族という、異世界で恐怖の対象に。


「たださ…… あれ、確かに最強だろうけど…… すっげえ孤独じゃね?」


 スヤスヤと寝息を立てる超巨大な少女を見ながら、俺は少し気の毒に思った。

 あれじゃあ、異世界で友達作りなんて無理だろうなぁ。

 誰も近づきたくないだろう。


「まあ、だからこその、この空間って事なんだろうな」


 どうやら、この空間は異世界の中の異世界と言うべきか、同じ時間軸だが、世界から切り離された空間の様だ。

 ここなら、あの巨大な少女も普通の生活が出来るという事。

 因みに、俺が居る机の上の町は、元の世界の商品や物品を買える便利な町らしいので、存分に活用させて貰おう。


 俺は現在の所持金を確認する。

 財布の中には見た事もない紙幣が入っており、これが異世界の紙幣らしい。

 単位はゴールド。

 財布の中に入っていた合計金額は千五百ゴールドだった。

 俺は机の上の町に出ようか迷ったが……


「サクラが起きるまで待つとしようか。あいつドジだから、この町のドームをゴミ箱に捨てられたりしたら困る」


 そう呟いて、俺はサクラが起きるまで待つ事にした。



●●



「うーん…… ふぁあぁ……」


 朝の微睡みに身を委ねながら、オレは瞳を開ける。

 ……?


「……ここ、どこ?」

 

 色んな家具が置かれた十帖程のワンルーム。

 見たこともない天井で、ワンルームの部屋なのは理解できるが、オレはこんな部屋では暮らしてない。

 辺りを見渡すと、この部屋の違和感に気が付いた。

 アレ?


「何この部屋…… 出口がない?」


 どういう事だろうか…… と考えた所で、オレは今までの記憶を思い出した。

 北の将軍様の核兵器で死に、オレは異世界に転生する事になった事を。

 確か、オレは最強の種族への転生を望んだ筈……

 

 オレは身体を起こし、自身の身体を見下ろす。


「……ん!?」


 俺の胸が膨らんでいる…… まるで、おっぱいじゃないか!

 しかも、服は黒いワンピース。

 頭からは長い黒髪が垂れてくる。

 まさか…… 

 オレは体の隅々を確認した。


「これ、女の子の身体だ…… なんで女の子になってるんだろう?」


 そう言いつつ、オレは身体を触る。

 うーん…… やわらかいなぁ。

 自分でも阿呆な事思ってるなぁと思いながら腰や胸を触っていると、ベッドの横のサイドテーブルに置かれていたスマホが鳴った。

 

 見たこともない機種だな…… でも、かっこいいじゃないか!

 

 スマホを見ながら、オレはそんな事を思う。

 けたたましく鳴るスマホの液晶には、オレの親友の名前であるユウタの文字が。


「はい。サクラです」

『おお! ちゃんと出たかサクラ! 身体を触るのに夢中で、出てくれないかと思ったぜ!』

「ユウタか。 ……見てたの?」

『おうよ! お前、最強種族だからな! どこに居ても見えるぜ!』


 よくわからない事を言うユウタ。

 最強種族なら、なぜどこに居ても見られると言うのか……


『はははっ! よくわからないって顔だなぁ!』

「当たり前じゃん……」


 ユウタの言葉にオレは、自分の顔が不審な顔になるのが分かる。

 オレの顔を何処からか見ているのか、オレの表情を察した様子でユウタは言う。


『近くに封筒は無いか?』

「封筒?」


 そういわれて、オレは封筒を探す。

 スマホが置かれていたサイドテーブルの上に、封筒があった。

 これかな?


『お、あったか』

「あったよ」


 封筒を開けて、中から手紙を取り出す。

 ああ。 ……なるほど、あの神様風おじいさんからの手紙か。

 手紙の送り主に納得しながら、オレは手紙を読み進めていった。


「えっと…… つまり、オレは今すげぇでっかい大巨人な女の子って事?」

『そういう事だな』

「まじかぁ」


 確かにオレは最強種族に転生を望んだが、まさか、こんな形で叶えられるとは。

 それはそうと、今ユウタは何処に居るんだろう?

 無意識に踏み潰したりしたら嫌だから、聞いておかないと。


「所でユウタ。今どこに居るの?」

『机の上に置かれたドームの中の町だ』


 そう返答が来たので、オレはベッドから少し離れた場所にある、質素なデスクを見る。

 あそこかな?

 ベッドから這い上がり、オレはデスクの前に行く。


『わーお…… 超でけぇ』

「わーお…… 超ちっせぇ」


 スマホ越しにオレ達はそんな事を言い合う。

 デスクの上には五センチ程の、丸いドーム型をした町の模型らしき物が置いてある。

 この中にユウタが居るのか……


『まるで全てを見下ろす絶対の女神様の様だなぁ。あっはっはぁ!』


 そんなユウタの笑い声が聞こえてくる。

 全く……


「そんな事より、どうやって異世界に行くの?」

『お前なぁ…… そんなデカさで異世界行くつもりなのか? 世界が滅びるぞ』

「まさかぁ! そんな訳ないじゃん!」


 オレの疑問に、ユウタは非難する様な言葉を言ってきた。

 流石に、今の大巨人の状態で外を歩ける筈が無い事は分かっている。

 でも、オレだって異世界を見てみたい。

 そんな願望をユウタにぶつけると、ユウタは得意げに返答が帰ってきた。


『安心しなって! オレの手元にとあるアイテムがある…… オレに向けた手紙の中に書かれていたアイテムだ』

「へぇ……」

『ネックレス型のアイテムなんだがな、これをオレが付けて…… なあ、その机の引き出しの中にVRゴーグルないか?』

「引き出しにVRゴーグル?」


 引き出しを漁ってみると、確かにVRゴーグルが見つかった。

 見た感じ、3DOFのスタンドアロン型のVRゴーグルだ。

 なんで引き出しに在ることを知っていたのか聞いてみると、手紙に書いてあったらしい。


『そのVRゴーグルをスマホでペアリングしな』

「了解。 ……できたよ」

『わかった。俺の方は準備完了だ! 後はお前がそのゴーグルを被るだけだ』

「わかった」


 そう言うと、オレはVRゴーグルを被った。

 

 目の前に広がる光景は、町を見下ろす高層マンションのベランダ。

 結構発展した先進国の様な街が眼下に広がっている。


「すごーい!」

『その反応の感じ、町に驚いているな? ハハハッ』

「それ以外に何があるのさ」

『上を見てみなって』

「上……? うわぁ!」


 上には…… と言うより性格には、町を囲むドームの向こうには、途方もなく巨大な女の子がVRゴーグルを被っていた。

 余りの迫力に声を失う。


『あれ、お前だぞ』

「……ええっ!?」


 あの見ているだけで、全てを無意味に感じさせる程の迫力の少女が、まさかの自分!?

 どういう事だ!?

 あの超デカい少女がオレって、じゃあこの景色は!?


「どういう事!? あれがオレだとしたら、この町は何なんだよ!?」

『驚いているなぁ…… ここは、お前からみたら机の上に乗ったドームの中だ』

「ドームの中?」


 オレはVRゴーグルを外し、机を見た。

 目の前には、五センチ程のドーム型のミニチュアの様な町。

 つまり、あれは、このミニチュアの町の中からの景色って事か?

 オレはもう一度VRゴーグルをつける。


『驚いているなぁ』

「当たり前だろ!」

 

 途方もなく巨大な自分を見上げながら、オレは問いかける。


「この景色は何なんだ?」

『この景色? ああ、お前が見ている景色か。その景色は、オレが付けているネックレスから見える景色さ』

「ネックレス?」


 俺がそう言うと、カメラの場所を変えた様に景色が動く。

 そして、目の前に赤い短髪と青い瞳が特徴の、アングロサクソン系の顔立ちのイケメンが現れた。


「なにこのイケメン、爆発しろ」

『お、まじか! 俺イケメンか! 爆発はしませーん!』


 目の前のイケメンの口と同じ動きで通話から声が聞こえてくる。

 つまり、このイケメンは転生したユウタって事か?

 こいつイケメンになったのかぁ…… 


「良かったね。イケメンになれて」

『おう、まじ嬉しいわ』

「その余裕がマジうぜぇわ」


 他愛もない会話だな。

 

『という事で、このネックレスをつけて異世界に行けば、お前も異世界を楽しめるって訳だな』

「ああ。なるほどぉ…… 確かに楽しめそうだ! 景色がVR180の規格で映ってるのが、オレの中でポイント高いわ」

『あっそう…… おまえ、転生してもガジェットオタク全開か』

「良いじゃん」


 少し話していると、それなりに落ち着きを取り戻した感じがする。


『てわけで、俺は町で装備を整えてから異世界に行こうと思う』

「おっけー」


 オレがそう言うと、ユウタは外出する準備を始めた。

 これから異世界に行く準備をするのだ。

 ユウタ曰く、このドームの町では様々な物が手に入るらしいから、どんなものが見れるか楽しみだ!


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