第21話
草原地帯で薬草を集め、イベントをいくつか回収した俺は、王都へと帰還した。
冒険者カードで入口の監査をパスし、王都へ。
夕暮れの街を歩いてギルドへと戻ってきた。
「ひ、ひぃ!?」
ギルドの中に入ると、視界のはしで誰かがそんな悲鳴をあげた。
そちらに視線をやると、登録の時に俺に絡んだハンスが、俺を見て震えている。
「にっ」
「うわああ!?」
俺がにっこりとした笑みを向けると、ガタガタと椅子から転げ落ちていた。
いくらなんでもビビりすぎだ。
周りの冒険者からも笑いが起きている。
俺はそのまま酒場のようになっているスペースを抜けて奥の受付へと歩いた。
「あ…グレンさん…!お帰りなさい…!」
俺の姿を認めたエレナがにっこりと笑う。
「薬草をとってきた」
「はい。クエストクリアの量に達しているか確認するので見せてもらってもいいですか」
「これだ」
俺は薬草でパンパンになった麻袋をエレナに渡した。
「こ、こんなに…!?すぐに確認しますね!」
エレナは薬草の量に目を丸くした後、測りのようなものを持ってきて薬草の重さを測る。
「量は十分ですね…!後は品質を…」
俺のとってきた薬草が、十分な量であることを確認したエレナは次に、ルーペのようなもので薬草の品質を測り出す。
エレナの表情がみるみる驚きのそれに変わっていった。
「こ、これ…!!」
エレナは俺をまじまじと見つめる。
「信じられません…!これ…す、全て高級薬草じゃないですか…!!」
「実はそうなんだが」
「す、すごいです…!!この短期間でこれだけの高級薬草を一体どうやって…!?中にはエリクサーもあるようです…!!」
「方法については教えられないな」
「そ、そうですよね…すみません。け、けど…本当にすごい…薬草採取のクエストでこんな高価な薬草ばかりをとってきたのはあなたが初めてですよ!?」
「これ全部を売りたい。どのぐらいのお金になる?」
「ええと…ちょ、ちょっと時間をもらえますか…!?今のレートだと…」
「時間がかかっても構わない。全て換金してくれ」
俺はエレナが薬草の値段を調べるのを待つ。
やがて、カウンターの上にあった薬草がすっかり無くなり、代わりに山のような金貨が積み上がった。
「す、全て調べ終わりました…換金料はこれだけになります」
「おぉ…!」
いきなり手に入った大金に、俺は思わず声を漏らす。
これだけあれば当分の資金には困らなさそうだ。
「信じられません…これだけの高級薬草が一度に換金されるなんて前代未聞です…」
エレナがカウンターに乗った金貨の量に、ごくりと喉を鳴らしている。
「何か入れるものをもらえないか?」
「す、すぐに…」
そのごエレナが持ってきた皮袋に俺は金貨を詰めて、ジャリジャリと音を立てながら受付を後にした。
「す、すげぇ…」
「なんだあれ…」
「どれだけモンスター倒したら1日の報酬があんなになるんだよ…」
「な、何かレアアイテムでもゲットしたんじゃねーのか…?」
「てかあいつ、今朝ハンスをワンパンした新入りじゃね…?」
酒場のスペースを通る時、冒険者たちが、俺の金を見ながらヒソヒソと何やら噂している。
「お、おっと!!すまねぇ!!」
「い、今退くから…!」
そして俺の進行方向にいた冒険者たちが、慌てて邪魔にならないように道を譲る。
俺はまるで海をわるモーセのように、スムーズに出
口まで歩き、冒険者ギルドを後にしたのだった。
「あれ…なんか俺、怖がられてる…?」
王城を目指して歩きながら、俺はふとそう思った。
Bランクのハンスをワンパンは流石にやりすぎただろうか。
…まぁこれで今後俺に無駄に絡んでくる冒険者も現れないだろうし、これはこれでいいか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます