第18話
「こんな簡単なクエストでいいのですか?」
提示されたクエスト用紙の中から俺が選び出したクエストに、エレナが目を丸くする。
数あるクエストの中から俺が選んだのは薬草採取のクエストだった。
「薬草採取は…こう言ってはあれですけど…まだ戦闘に慣れない駆け出しが受けるクエストですよ?ハンスさんを倒したあなたならもっと」
「いや、これでいいんだ」
別の、もっと実入のいいクエストを進めてくるエレナに俺はかぶりをふった。
「初めてのクエストだからな。確実にクリアできるものを受けて要領をつかみたい」
もちろん俺の狙いは別のところにあるのだが、それをわざわざここで告げる必要はないだろう。
「…そ、そうですか。わかりました。そういうことなら、手続きを進めますね」
エレナがクエスト受注の手続きを素早く進める。
「それでは行ってらっしゃいませ」
「おう」
丁寧にお辞儀をするエレナに会釈をして俺はカウンターを後にした。
「おぉ…」
「おっと…」
「す、すまん」
入り口に近い酒場の方に歩くと、冒険者たちが慌てたように傍に退いて道を開けた。
先ほどハンスをワンパンしたおかげで、もう俺に絡もうとしてくるものは誰もいない。
チラりと視線を送ると、ハンスはまだ伸びていた。
…少し強く殴りすぎたか?
いや、手加減は完璧だったはずだ。
しばらくしたら目を覚ますだろう。
「さて…行くか」
ギルドを出た俺は、薬草採取のために王都の外にある草原を目指して意気揚々と歩き出した。
「着いたな」
一時間ほど歩いたのち、俺は王都を出て草原地帯に到着した。
ちなみに王都の入り口には関所のような場所があるが、冒険者カードがあれば自由に出入りができる。
「さて……マップはどんなだったかな」
だだっ広い草原地帯を見渡して、俺はゲームプレイ時の記憶からこの辺りのマップの詳細を思い起こす。
俺が受けたクエストは薬草採取だ。
当然今から薬草を集めるわけだが、薬草にも種類がある。
簡単に言えば、どれだけ集めても金にならない薬草から、非常に希少でなかなか市場に出回らず、少量でかなりの価値を生み出す薬草までさまざまあるということだ。
今回俺が薬草採取のような簡単なクエストを受けたのは、希少な薬草を採取してがっぽり稼ぐためである。
本来、探しても探してもなかなか見つからない希少な薬草……例えばエリクサーのような薬草でも、マップ上の群生地帯などを把握している俺にかかれば簡単に見つけることができる。
要はゲームの知識を活かして、楽に金を稼ごうということである。
「1番近場の群生地帯は…確かこっちだな」
記憶を頼りに、俺は早速高級薬草集めを開始したのだった。
「ふいー…これでここらの高級薬草一通りは集めたか」
二時間後。
俺はパンパンになった麻袋を片手に額の汗を拭いた。
あれから休まずにこの草原地帯のあちこちを歩き回ってひたすら高級薬草を集めて回った。
俺の予想通り、ゲームのマップと全く同じ位置に、高級薬草たちは群生していた。
おかげで効率的に高値で売れる薬草を集めることができた。
これをギルドに持っていって売れば、結構な金になるだろう。
「今日はこの辺だな」
俺はここらで薬草採取を終えることにした。
あまり一度に積みすぎても、群生地帯が枯れてしまうからな。
またしばらく時間を置いて、薬草が生え出した頃に摘みにこよう。
「ん…?」
王都に引き返そうとしたところで、俺は視界のはしに見覚えのある巨大樹を見つけた。
「あれは確か…」
草原地帯に立った一本経っている巨大樹。
確かあの木の根元あたりで、色々とイベントが起こるはずだった。
「ついでだし、踏んでおくか」
せっかくここまできたんだ。
俺は巨大樹付近で起こるあるイベントをクリアしてから王都に戻ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます