第13話
巨大な城門が開き、馬車が城の内部へと入っていく。
「で、でけぇ…」
「すごい…こんな大きな建物、初めて見た…」
アレルとアンナは、巨大な石造りの王城に瞳を輝かせている。
「…ほとんど変わらないな」
一方で俺は、王城の内部の構造がゲームとほとんど変わらないことを確認していた。
主人公アレルが王都で勇者になるための訓練を受けるイベント期間を、『世界の終わりの物語』の界隈では修行編などと呼んでいた。
おそらくアレルはこれからここ王城に住み、剣の達人などから戦いの訓練を施されることだろう。
俺やアンナには、そういった訓練の義務は課されずに、あくまでアレルの側に住んでメンタルケアなどを行なっていればいいと思われる。
王都のマップは広くあちこちにさまざまなイベントやストーリーが散りばめられているので、王城で生活する傍ら、細かなイベントを回収していくのも楽しいかもしれないな。
「着きました。さて、まずは食事にしましょうか。
3人ともお腹が空いているでしょうから。現在は王
は不在のため、謁見は後日行われます」
そうこうしているうちに馬車が城の中庭で停車した。
俺たち3人は馬車を降りて、色とりどりの花が植えられた綺麗な庭を、お告げの巫女に先導されて歩くのだった。
「どうですか?勇者様。料理のお味は」
「美味しい…!!すげぇ美味しい…!!」
「そうですか。それは何よりです」
豪勢な料理にがっつくアレルをお告げの巫女が笑顔で見守っている。
王城の中に入った俺たちを待っていたのは、香ばしい匂い漂う豪華な夕食だった。
数十人は座れそうな長テーブルについて、俺たちは次々に運ばれてくる絶品料理で空きっ腹を満たす。
「美味しいね、グレン」
「あぁ、そうだな」
俺の隣で料理を口に運んでいるアンナも笑顔が溢れている。
ちなみになんだが、俺たち3人の両脇にはそれぞれ2人ずつメイドが立っており、空いた皿を下げたり次の料理を運んできたり、飲み物をついてくれたりと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。
「ご満足いただけたようで何よりです。それでは今から3人の部屋に案内しますね」
夕食の後、俺たち3人は急遽俺たちのために用意された城内の部屋へと移動することになった。
「おぉ…これは…」
2人と別れ、俺は自分のために用意された部屋へとやってきた。
広いスペース。
キングサイズのベッド。
高そうな調度品。
全てが一級品で、ただの村人の俺が住んでもいいのかと少し気が引けてくる。
「何か用があればお申し付けください」
世話係も2人ほど着くらしい。
「よっと」
扉が閉まって1人になった後、俺はベッドにダイブする。
ふかふかの毛布に体を沈めながら、天井をぼんやりと眺めた。
「まさかこんなことになるなんてな…」
アレルが俺たちを王都に同行させたのは完全に予想外だった。
しかし、そのおかげで村から出ることができて、しかもこんなに豪華な部屋で暮らせることになった。
これはむしろアレルには感謝しなくてはならないだろう。
「明日からは……王都を散策してイベントでもこなすか」
明日からはおそらくアレルは訓練に明け暮れる日々になるだろう。
その間、俺やアンナは暇になる。
だから、王都の各所で発生するイベントを俺は踏んで回収しようと思っていた。
何が起きるかを知っているため危険はないだろうし……ゲームのリプレイをやっていくような感覚で楽しめることだろう。
「…今日は寝るか」
1日でいろいろなことがありすぎたために、かなり精神を摩耗した。
俺は毛布をかぶって目を閉じる。
眠気はすぐにやってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます