第6話:彼女の気持ち・神義 莉里華

私と坂槙さかまき 遥希はるきくんは一年の時に友達になった。


お互いに学校での人間関係が疎ましく思っているところがあり、変な勘ぐりを受けないように学校では今までと変わらないように振る舞っている。学校で彼と関わる事は無い。

たまに一緒に買い物に行く事はあるけど、殆ど彼の家でお喋りをしたり、彼のタブレットを借りて漫画を見たり、小説を読んだりしている。

お互いに干渉し過ぎない。


ご飯を二人で食べるのが楽しいのもあるけど『その方が効率が良いでしょ』と言って彼に納得してもらった。

一人で食べるご飯はなんか味気ない。


二年にあがっても私たちの関係に変化はない。

私にとって彼は、変に気をつかわなくて良いくつろげる場所。


そんな私たちの関係に変化があった。

秋月あきづき 朱音あかねと知り合って、彼女の話を聞いているうちに『この子も自分を抑えて学校に行ってるんだ』と思った。

息抜きにならないかと坂槙くんに会わせてみた。

最初はぎこちなかった朱音だけど徐々に馴染んできた。


朱音がいないところで坂槙くんと『妹ができたみたい』と話し合った。

朱音には内緒。


夏休み前に彼の家に遊びに行った時、見たことのないトレッキングシューズが玄関にあった。

いつもと変わらない調子でリビングに入った瞬間に心臓が止まるかという思いをして足を止めた。

そこにいたのは儚げな白い女性ひと、身長は私と同じくらい、でも胸や腰の肉付きは彼女の方が良い。別に太っているわけではないウエストのくびれも細くてグラマラスな感じ。

優しげな表情で、露出の少ない服装。こういうのを清楚系っていうのかな?


『いらっしゃい、莉里華、こちら隠岐那おきな 珠衣しゅえさん』

『うん…ただいま、遥希』


何故かわからないけど、『ただいま』と言った。それに今まで苗字で呼んでいたのに名前で呼んだ。

遥希は少し驚いた表情をし、隠岐那さんは面白いものを見るようにニッコリしていた。

この時からここにきた時には『ただいま』という様になり遥希を名前で呼ぶ様になった。


その後、遥希と隠岐那さんが出会った経緯を聞いた。

遥希はまた無自覚にお節介をやいたんだと思った。

でも隠岐那さんのその後の行動を考えると遥希の事を好きなのかな?

それに、今の私の感情も分からない。

なんかモヤモヤしてる。


隠岐那さんと話しているうちに彼女が眼皮膚白皮症アルビノである事を聞いた。その事について気を遣わないでいて欲しいと伝えられた。

『以前はこの容姿のせいで人と上手く接する事ができなかったけれど、気持ちを切り替えて今は大学に通っている』という事を彼女珠衣さんから話してくれた。


それと、意外なことにラノベの話で盛り上がったりもした。

隠岐那さんの見た目からはラノベは読んでなさそうなのに、意外だった。


遥希のいないところで『遥希のこと、好きなんですか?』と尋ねた事がある。

『う〜ん、分からないかな』そう返事が返ってきた。

ってことは、この先は分からないという事。


私はどうしたいんだろうか


そんな会話をした辺りから隠岐那さんから『私も、名前で呼んで』と言われた。

そこからは砕けた感じになり、姉の様でもあり友達でもある隠岐那さんの事を『珠衣しゅえさん』と呼ぶようになった。


私が遥希の家を訪れる回数が増えた。

正確に言うと夏休みは入り浸った。


私は遥希に恋をしたんだろうか……

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