第4話:隠岐那 珠衣

隠岐那おきな 珠衣しゅえ


私は眼皮膚白皮症アルビノでこの容姿の為に奇異な眼を向けられて育った。

中学までは人目を避けるように過ごしてきた。


高校になってからは少ない友人に勧められたラノベで銀髪や白髪のヒロインが出てきているのを読んで、自分の外見を気にすることをやめ、美容にも気をつかうようにした。

今までのように人目を避けるのではなく、私もあのヒロインのように堂々としてみようと思った。

夏休み中にイメチェンを実行した。髪色も変えて見たのだが、今ひとつしっくりこなかったので髪色はそのままで姿勢や服装に気を使うようになった。


私は変われただろうか?そう思いながら新学期初日を迎えた。

友達はおおむね『珠衣ちゃん、綺麗になったね』と言ってくれた。嬉しかった。

ただ、男子からは変な視線を感じる事が増えて嫌だった。

それでも中学の頃と比べれば充実した学校生活を送り卒業式を迎える事ができた。

卒業式を終えた後、複数の男子から『好きでした』と言われた。

私の何を知って彼らは私を好きになったんだろう?

それに明日からは接点もなくなるのにどうしてこのタイミングで告白するのだろう?


大学へ進学して引っ越してきた。これからは一人暮らし。

二年の冬に自宅の近くで不審者に遭遇した。三年に上がったこの春には跡をつけられているような感じもあった。

もっと条件の良い部屋が見つかったのでそこに引っ越した。

引っ越してから暫くは近所の散策を繰り返しこの町を知る事に注力した。

その時に坂槙さかまきくんと出会った。


坂槙くんとの出会いは本当に愚然。駅の周辺を散策しているうちに人気のない通りを歩いていた時に知らない男性に声をかけられた。

私が断ってもしつこく声をかけてきて諦めてくれない。戸惑う私は強い言葉で拒否を告げた。これで去って欲しい。

結果は逆効果だった。男性は私の腕を掴み引っ張る。

恐怖に声を出せずにいると『そこ、邪魔なんで退いてくれませんか?』

近所の高校の制服を着た男子が声をかけてきた。

男性は男子高校生に対して強い言葉で追い払おうとしている。注意がそっちにそれた隙をついて腕を振り払い、その男子高校生の後ろに逃げた。

怖くて震えていたんだと思う。


男性は腕を伸ばしてきたが、男子高校生は腕を広げて私を庇ってくれた。

人通りの少ない通りとはいえ日中にこれだけ騒いでいると人が集まってくる。

それに気がついた男性は舌打ちをしてその場を立ち去って行った。


私は安堵し、彼にお礼を告げようとしたが、膝が震え、一人で立っていることも出来ずに彼に縋りついていた。


落ち着いた私は改めて彼にお礼をしたいと持ちかけたのだが『すいません、買って着た食材を冷蔵庫に入れないといけないので』と断られた。

それならばと『お礼にご飯を作らせて下さい。さあ、行きましょう』半ば、強引に彼のお家に押しかけた。


彼のお家に着き『何か食べたいものはある?』と聞くと『ジャーマンライスが食べたい』と返答があった。

ジャーマンライス?どんな料理?


スマホで調べるとライスの上にスライスした玉ねぎが少量、その上に薄焼き卵、トンカツを乗せ、ソースをかけたもの。

彼にこれでいいかと確認すると、ライスはカレーピラフ、ソースはデミグラスソースとタルタルソースをかけたもの。トンカツは乗ってないとの事。以前、旅行に行った際に食べた事があって、今日作るつもりだったそうだ。


レシピを見ながら何とか調べているとジャーマンライスではなくインディアンオムライスだということがわかり料理を完成させる。


『初めてなのでうまく出来ているか分かりません』と断りを入れて彼と夕飯を食べた。


私にしては大胆な行動だった。

彼が年下で、私を助けてくれたから気を許してしまったんだと思う。

ここで改めて自己紹介をして連絡先を交換した。


比較的、時間にゆとりのある大学生である私は合間を見て彼と交流を深めていった。

同じ大学生男子から向けられる目は私にとって気持ちの悪いものだったが、彼、坂槙くんからはそう言ったものを感じなかった。


夏休みに入る頃には彼の友達とも仲良くなった。

神義しんぎ 莉里華りりかさんと秋月あきつき 朱音あかねさん。

神義さんはモデルの様な美人、秋月さんは元気な可愛い女の子。

坂槙さかまき 遥希はるきくんは癒される男の子。


この四人で過ごす時間はとても心地よいものになっている。

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